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不同意性交等で執行猶予をとる方法は?示談で酌量減軽をめざす!
不同意性交等罪を新設した改正刑法が2023年7月13日に施行されました。
この日以降に相手の同意なく性交等をした場合は、これまでの強制性交等罪や準強制性交等罪ではなく、不同意性交等罪が問題になります。
このページでは、不同意性交等罪で執行猶予をとる方法について、刑事事件に詳しい弁護士 楠 洋一郎が解説しました。ぜひ参考にしてみてください!
目次
不同意性交等とは?
不同意性交等とは相手の同意なく以下のいずれかの行為をすることです。
①性交
②肛門性交
③口腔性交
④膣までは肛門に陰茎を除く身体の一部または物を挿入する行為であってわいせつなもの
13歳未満の者に上記の行為をした場合は相手の同意があっても不同意性交等になります。13歳以上16歳未満の者に5歳以上年上の者が上記の行為をした場合も同様です。
不同意性交等で執行猶予をとるには「酌量減軽」が必要
1.不同意性交等で起訴されたらどうなる?
不同意性交等罪で起訴されたら、被告人として刑事裁判を受けることになります。最終的には以下の判決のいずれかが言い渡されます。
①無罪判決
②執行猶予付きの懲役刑
③執行猶予なしの懲役刑(=実刑)
不同意性交等の容疑を認めているケースでは、①の無罪判決ではなく、②の執行猶予付きの懲役刑を目指すことになります。
執行猶予が付けば、猶予期間に新たに罪を犯して有罪判決が確定しない限り、今回の事件で刑務所に入ることはありません。
これに対して、執行猶予が付かない実刑判決であれば、刑務所で服役することになります。
2.不同意性交等罪の罰則は?
不同意性交等罪の罰則は、5年以上20年以下の拘禁刑です。
拘禁刑とは、刑務作業が義務とされている懲役刑と異なり、受刑者の状況に応じて刑務作業や更生プログラムを柔軟に科すことができる刑罰です。刑務所に服役するという点については懲役刑と変わりません。⇒拘禁刑とは?いつから施行される?懲役刑との違いは?弁護士が解説
拘禁刑は現時点ではまだ導入されていませんが、2025年6月までに導入されることになっており、それまでの間は懲役刑として扱われます。
3.懲役3年以下でないと執行猶予はつかない
どんな犯罪であっても、執行猶予を付けるためには3年以下の懲役刑・禁錮刑であることが必要です。3年を上回る懲役刑・禁錮刑の場合は、法律上、執行猶予を付けられませんので、必ず実刑になります。
【刑法25条】
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4.酌量減軽されれば懲役3年以下で執行猶予も可能
執行猶予が付くためには、3年以下の判決である必要があります。例えば、懲役4年という判決であれば100%実刑になってしまいます。
不同意性交等罪の罰則は最短でも懲役5年ですので、執行猶予の3年要件をクリアできないように思われます。
もっとも、酌量減軽されれば、刑罰の下限が懲役5年から懲役2年6月に減軽されるため、執行猶予の3年要件をクリアすることができます。
「酌量減軽」(しゃくりょうげんけい)とは、法定刑では刑罰が重すぎると考えられる場合に、裁判官の裁量によって特別に減軽することです(刑法66条)。
【刑法66条】
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酌量減軽されると懲役刑の最短と最長がそれぞれ半分になります。不同意性交等罪の罰則は懲役5年から懲役20年ですので、酌量減軽されると、懲役2年6月から懲役10年となり、この範囲で実際の刑罰が言い渡されます。
そのため、酌量減軽されると、執行猶予の3年要件をクリアする道が開けることになります。
【刑法68条】
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5.不同意性交等で酌量減軽されれば執行猶予の可能性が高い
酌量減軽されると、法律上は執行猶予をつけることが可能になりますが、必ず執行猶予が付くわけではありません。
もっとも、酌量減軽するケースは、裁判官の頭の中に「執行猶予が適切である」という結論がまずあり、それを可能とするために酌量減軽することが多いです。
そのため、「情状」(刑法66条)が認められ酌量減軽されれば、執行猶予の要件である「情状」(刑法25条)も同時に認められ、執行猶予が付く可能性が高いです。
不同意性交等で執行猶予をとるには示談がマスト
1.酌量減軽には示談が必要
不同意性交等で執行猶予をとるためには、酌量減軽して執行猶予を付けるに値する「情状」(刑法66条)が認められる必要があります。
この情状のうち最も重要なものは被害者との示談です。不同意性交等罪で起訴されると、被害者との間で示談が成立しなければ、他にどんなに有利な情状があっても、酌量減軽されず、執行猶予が付かない可能性が高くなります。
この点が不同意わいせつ罪とは異なる点です。不同意わいせつのケースでは、示談がとれなくても、①初犯の方で、②再犯防止策をとっており、③家族が情状証人として出廷すれば、執行猶予がとれる余地は十分にあります。
これに対して、不同意性交等のケースでは、上記のような有利な事情があったとしても、示談が成立しなければ、執行猶予までは難しいでしょう。
示談ができない場合は、供託や贖罪寄付をすることはできますが、執行猶予が付く可能性は低いです。
2.示談には宥恕文言が必要
不同意性交等で執行猶予になるためには、酌量減軽されることが必要です。そして酌量減軽されるためには、被害者との間で示談を成立させることが必要です。しかし、示談がまとまれば内容は何でもいいというわけではありません。
執行猶予の可能性を高めるためには、示談書に「許す」とか「寛大な処分を求める」といった「許していることがわかる文言」が入っている必要があります。この文言のことを宥恕文言(ゆうじょもんごん)といいます。
宥恕文言により被害者の許すという意思が表明されているからこそ、減刑の根拠になるのです。示談がまとまっても、示談書に宥恕文言が入っていなければ、裁判官に評価してもらえず、実刑になる可能性がかなり高いです。
3.不同意性交等の示談金の相場は?
不同意性交等の示談金の相場は100万円から300万円です。性犯罪の中で最も重い犯罪ですので、示談金の相場も高額になります。
具体的な金額については個別のケースによって異なってきますので、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
予算に限りがある場合は、示談金を確保できるよう、できるだけ弁護士費用が安い法律事務所に依頼するとよいでしょう。
不同意性交等で執行猶予をとるには示談以外の情状も指摘すべき
不同意性交等罪で起訴されても、宥恕文言が入った示談がまとまれば、酌量減軽され執行猶予が付く可能性が高くなります。
とはいえ、執行猶予が保証されるわけではなく、手口が悪質であったり、前科があれば、実刑になる可能性も十分にあります。そのため、示談以外にも以下のような活動を行い、弁護士が有利な情状として裁判所に指摘すべきです。
①治療を受ける
実際は相手が同意していないのに、「同意しているはず」と自分に都合よく考え、不同意性交等に及んでしまうことがあります。
そのような認知の歪みを修正するために、保釈後にカウンセリングや性犯罪治療の更生プログラムを受けてもらいます。
本人にはカウンセリングや更生プログラムでどのように変わったのかを被告人質問で述べてもらいます。カウンセラー等に専門家証人として出廷してもらうこともあります。
②家族に監督してもらう
性依存症にかかっている場合、自分一人の力で更生することは容易ではありません。再犯防止のため、家族がクリニックに付き添ったり、スマートフォンのGPS機能を使って本人の位置情報をモニタリングする等して本人を監督します。
裁判では家族に情状証人として出廷してもらい具体的な監督プランを証言してもらいます。
⇒情状証人とは?尋問の流れや本番で役に立つ5つのポイントを解説
不同意性交等-まずは執行猶予よりも不起訴を狙うべき
不起訴とは被疑者を起訴しない処分です。不起訴になった時点で刑事手続は終了します。起訴されないので、処罰されたり前科がつくこともありません。
執行猶予は判決として言い渡されますので、起訴されていることが前提になります。起訴されれば判決まで最短でも2か月程度かかります。また、保釈されない限り勾留が続きます。
そのため、執行猶予よりもまずは不起訴を狙うべきです。不同意性交等の容疑を認める場合、不起訴となるためには最長20日の勾留期間内に被害者との間で示談をまとめることが必要です。
起訴後に示談をしたからといってさかのぼって不起訴になるわけではありません。そのため、不起訴を狙うのであれば一刻でも早く弁護士に依頼すべきです。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や選び方を解説
不同意性交等で示談なしで執行猶予を狙える2つのケース
不同意性交等で執行猶予をとるためには、被害者との間で示談を成立させることが必要です。もっとも、示談がとれなくても執行猶予を狙えるケースもあります。それが以下の2つのケースです。
【ケース1】 風俗嬢から性的サービスを受けた際に行き過ぎた行為をしたケース 【具体例】 デリヘル嬢に素股をしてもらっていたが興奮してしまい、強引に挿入してしまった。 |
【ケース2】 被害者が性行為の一部について同意していたが、挿入までは同意していなかったケース 【具体例】 知人女性と飲酒した後、女性の部屋に行き、キスしたり胸をもんだら嫌がっていなかったので、最後までやっていいだろうと思い、強引に挿入してしまった。 |
このようなケースでは、示談が成立しなかったとしても、①初犯の方で、②被害弁償を行い、③再犯防止策をとっており、④家族が情状証人として出廷すれば、執行猶予を獲得できる余地はあります。
風俗嬢が被害者となる不同意性交等では、店の責任者や本人から高額な示談金を請求されることがあります。
典型的な不同意性交等と異なり、執行猶予をとるためには示談が必須というわけではありませんので、このようなケースでは、相手の言いなりになるのではなく、弁護士が毅然と交渉することも必要です。
不同意性交等に強い弁護士が解説!