強制わいせつで執行猶予を獲得するための17のポイント

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

強制わいせつで起訴された場合、裁判官は、①強制わいせつの悪質性や、②示談等の強制わいせつ後の事情、③前科等の被告人の状況に基づき、執行猶予にするかどうかを決めます。

 

裁判官が検討する17のポイントについて弁護士が詳しく解説していきます。

 

強制わいせつの悪質性

① 計画性の有無・程度

事前に犯行計画を立てて強制わいせつをした場合は、より悪質として、刑罰が重くなる傾向があります。逆に、その場の思いつきで衝動的にわいせつ行為をした場合は、相対的に刑罰が軽くなる傾向があります。

 

② 侵入類型か否か

被害者の自宅に侵入して強制わいせつをした場合、路上や電車内で強制わいせつをした場合に比べてプライバシー侵害の程度が大きいため、より悪質と評価されます。

 

③ 凶器の有無

ナイフ等の凶器を示して、「言うことを聞かないと刺すぞ!」等と言って脅迫した場合や、ロープで被害者の体を縛って強制わいせつをした場合は、より悪質と評価されます。

 

④ 犯行継続時間

わいせつ行為の時間が長ければ長いほど、被害者の苦痛も大きくなりますので、悪質と評価されます。逆に、2,3秒抱きついただけの場合は、相対的に悪質性が低いことになります。

 

⑤ 侵害の程度

膣や肛門の中に指を入れる行為が強制わいせつの中では最も悪質といえるでしょう。着衣の上から体を抱きしめたり、胸をもむ行為は、強制わいせつの中では、相対的に悪質性の軽い部類に属するといえるでしょう。

 

⑥ 撮影の有無

強制わいせつをしている最中に、スマートフォン等で被害者を撮影していれば、より大きな不安や恐怖を与えることになりますので、悪質と評価されます。幼児にわいせつ行為をしている状況を撮影した場合は、強制わいせつとは別に、児童ポルノ法違反で起訴されることもあります。

 

⑦ 被害者の年齢

被害者が幼児や性体験のない未成年の場合は、強制わいせつの被害を受けたことによって、今後の対人関係などに深刻な影響を受けることが予想されますので、悪質と評価されやすくなります。

 

⑧ 被害者の落ち度

被害者の方から誘ってきた等、落ち度といえる事情があれば、悪質性を軽減する方向に作用します。

 

強制わいせつ後の事情

⑨ 反省

強制わいせつで執行猶予を獲得するためには、被告人が反省していることが大前提です。裁判で、反省文を証拠として提出したり、被告人質問において、被告人の口から反省の言葉を語ってもらいます。

 

⑩ 示談

執行猶予に最も大きな影響を与える要素です。被害者に「許す」という文章が入った示談書に署名・捺印してもらうことができれば、執行猶予の可能性がかなり高くなります。

 

⑪ 被害弁償

示談が成立しなかったとしても弁償金を被害者に受けとってもらった場合は、有利な情状として裁判官に評価されます。被害者が損害賠償命令の申立てをするときは、被告人質問で、これに誠実に対応する旨話してもらうことにより、ある程度評価される場合もあります。

 

⑫ 再犯防止への取組み

定期的に医師の診察や臨床心理士によるカウンセリングを受けている場合は、更生のために努力しているとして、裁判官に評価されることが多いです。

 

⑬ 家族の監督

被告人の家族が情状証人として裁判所に出廷し、被告人を監督すると誓約すれば、有利な事情になります。家族の監督だけで執行猶予の可能性が大幅に上がることはありませんが、微妙なケースでは、充実した監督プランを提示することにより、執行猶予判決の後押しとなることがあります。

 

⑭ 自首

自首していれば、減刑される可能性が十分にあります。強制わいせつの法定刑は懲役6か月~10年ですが、減刑されれば、懲役3か月~5年の範囲で判決が下されることになり、執行猶予の可能性が高まります。

 

強制わいせつの被告人の事情

⑮ 前科・前歴の有無

執行猶予中の再犯の場合は別として、前科・前歴があるからといって、それだけで執行猶予の可能性がなくなるわけではありません。ただ、5年以内に性犯罪の前科・前歴があれば、かなり不利な要素になってしまいます。10年以上前の前科で、スピード違反など強制わいせつと全く関係ない犯罪の場合は、ほとんど影響はありません。

 

⑯ 被告人の年齢

若ければ若いほど、心が柔軟で更生の余地があると考えられますので、有利な情状にはなるでしょう。ただ、「若い」というだけで、執行猶予の可能性が大幅に上がることはありません。裁判官が執行猶予にするかどうか悩んでいるときに、少しだけ執行猶予の後押しをするにとどまります。

 

その他の事情

⑰ 余罪の有無

起訴された事件がひとつであっても、同一の被害者に対して複数回強制わいせつをしていたときは、刑の加重要素になります。例として、「電車でいつも乗り合わせる被害者に何度も痴漢(強制わいせつ)をした場合」、「近所に住む幼児を自宅に連れ込んで何度もわいせつ行為をした場合」等が考えられます。

 

強制わいせつで執行猶予にするかどうかを決めるプロセス

裁判官は、これら17の要素を総合的に判断して、執行猶予をつけるか否かを決めます。判断枠組みとしては、まず①から⑧の事情を検討することによって、強制わいせつの悪質性を判断し、大まかな刑罰の枠を決めます。

 

それでは、悪質性の高いケースと悪質性の低いケースに分けて、大まかな刑罰の枠がどうなるかを見ていきましょう。余罪がないと仮定した場合、悪質な強制わいせつ次のようなケースです。

 

【悪質性の高い強制わいせつ】

①あらかじめ計画した上で、②被害者の自宅に侵入し、③凶器を示して、④長時間にわたって、⑤被害者の膣に指を挿入する等のわいせつ行為をしながら、⑥その状況を撮影した。

 

この場合、想定される大まかな刑罰の枠としては、懲役3年~懲役10年程度です。逆に、相対的に悪質性の低い強制わいせつは次のようなケースです。

 

【悪質性の低い強制わいせつ】

①計画性がなく衝動的に、②路上や電車内で、③凶器を示さずに、④数秒間、⑥被害者を抱き寄せたり、着衣の上から身体をもむ等のわいせつ行為をした。

 

この場合、想定される大まかな刑罰の枠としては、懲役1年~懲役3年程度です。

 

裁判官は、強制わいせつの悪質性に基づき大まかな刑罰の枠を決めた後に、強制わいせつ後の事情や被告人の状況などを考慮し、その枠の中で具体的な刑罰を決めることになります。

 

悪質性の低いケースでは、初犯であれば示談や被害弁償がなくても執行猶予になる可能性が高いです。

 

悪質性の高いケースでは、初犯であれば示談できれば執行猶予となる可能性が高いです。示談できなかったとしても、行為後の事情や被告人の状況に関して有利な事情が多数あれば、執行猶予となる可能性があります。

 

弁護士としても、このような裁判官の判断枠組を前提として弁護活動すべきです。すなわち、①まずは悪質性を軽減できる事情を裁判官に指摘した上で、②行為後の状況や被告人の状況等について有利な点を主張すべきです。

 

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