強制わいせつと性的意図-最高裁の判例変更も解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

強制わいせつで問題となる性的意図とは?

「性的意図」とは自らの性欲を満足させようとする意図のことです。

 

性的意図とよく比較されるのが故意です。故意は自分がしていることを認識し、「そうなってもいい」と結果を受け入れている心理状態です。

故意とは?確定的故意と未必の故意について弁護士が解説

 

性的意図は、故意とは異なり、単に認識・許容している状態を超えて、「性欲を満足させたい」という積極的な意思を意味します

 

例えば、夜道で見知らぬ女性に抱きつき胸を触った場合、「自分が女性に抱きつき胸を触っている」ことを認識していれば、強制わいせつの故意が認められます。

 

そして、このようなことをする目的は性欲を満足させるためと考えるのが自然ですので、性的意図も認められるでしょう。

 

もっとも、加害者が性欲を満足させるためではなく、女性に復讐するためにこのような行為をした場合は、性的意図は認められないことになります。

 

強制わいせつが成立するためには性的意図は必要?

強制わいせつ罪が成立するためには故意が必要です。

 

☑ 胸をもむ

☑ キスをする

☑ 下着の中に手を入れる

 

被害者に対してこのような行為をしていることを認識していれば、強制わいせつの故意は問題なく認められます。

 

それでは、強制わいせつ罪が成立するためには、故意に加えて性的意図も必要となるのでしょうか?

 

結論からいうと性的意図は不要です。ただ、一部のケースでは、わいせつ行為にあたるかどうかを判断するために性的意図の有無が考慮されることがあります。

 

強制わいせつと性的意図の関係

従来の最高裁判所の判例では、強制わいせつ罪が成立するためには、例外なく性的意図が必要とされていました(最判昭和45年1月29日)。

 

しかし、平成29年、最高裁判所は、性的意図を必要としていた従来の判例を変更しました(最判平成29年11月29日)。最高裁の新しいフレームワークをまとめると次のようになります。

 

①誰が見てもわいせつといえる行為

性的意図は不要

②わいせつ行為に当たるかどうか微妙な行為

わいせつ行為に当たるか否かを判断するための一事情として、性的意図を考慮する場合がある

 

【最判平成29年11月29日の事案】

融資を受ける目的で女児に自己の陰茎をくわえさせた状況等を撮影した行為について強制わいせつ等に問われた事案。1審、2審は、「性的意図は認められないが、例外なく性的意図を必要とした昭和45年最高際の考えは妥当ではない。」と判断し、強制わいせつについて有罪とした。

 

性的意図がなくても強制わいせつが成立するケース

強制わいせつの成否が問題となるほとんどの事件では、加害者は性欲を満足させるために行為に及んでおり、性的意図が認められます。そのため、例外なく性的意図を必要とする従来の判例を前提としても、ほとんどのケースで強制わいせつ罪が成立します。

 

しかし、次のようなケースでは、判断が別れます。

 

加害者が被害者にもっぱら復讐する目的で、被害者を脅迫し、怖がっている被害者に「服を脱げ」と命令し裸にさせ、陰部を開かせた上で写真撮影した

 

このケースでは、加害者は復讐目的で行為に及んでおり、性欲を満足させようとする性的意図はありません。

 

昭和45年の最高裁判例によれば、強制わいせつが成立するためには例外なく性的な意図が必要となることから、このケースでは強制わいせつ罪は成立せず、刑の軽い強要罪が成立するにとどまります。

 

強制わいせつ罪…懲役6か月~懲役10

強要罪…懲役1か月~懲役

 

これに対して、最高裁の平成29年のフレームワークによれば、女性に服を脱がせ、陰部を開かせて撮影することは、誰が見てもわいせつな行為と言えることから、加害者の性的意図は不要とされ、たとえ復讐目的であっても強制わいせつ罪が成立することになります。

 

平成29年のフレームワークでは、強制わいせつが成立する範囲が広くなりますが、これは性犯罪に対する社会の受けとめ方の変化をふまえ、最高裁が被害者の気持ちに寄り添った判断をしたためです。

 

被害者がわいせつ行為によって受ける精神的ダメージは、加害者側に性的な意図があるか否かによって変わってくるわけではありません。

 

そのため、性的意図という加害者側の事情によって、強制わいせつ罪の成立に絞りをかけるのではなく、客観的にわいせつ行為をした以上は、性的意図を問わずに強制わいせつになることを明らかにしたものです。

 

強制わいせつで性的意図が考慮されるケース

最高裁の平成29年のフレームワークでは、わいせつ行為にあたるか否かが微妙なケースでは、わいせつ性を判断するための一事情として、性的意図の有無を考慮する場合があることになります。

 

「わいせつ行為にあたるか否かが微妙なケース」として具体的には次のようなケースが考えられます。

 

ふだんから仲良くしていた親戚の少年(10歳)と一緒に風呂に入る際、少年の陰部を指でツンツンと4,5回押した。

 

このケースで、指で少年の陰部を押した行為は、誰が見てもわいせつ行為にあたるとはいえないでしょう。

 

このようにわいせつ行為にあたるかどうか微妙なケースでは、行為者と少年の関係や行為前後の状況といった諸般の事情を検討した上で、わいせつ行為に該当するかどうかを、個別具体的に判断することになります。

 

そして、行為者が性的意図を有していたかどうかも、他の事情と並んでわいせつ性を判断するためのひとつの要素になります。

 

仮に、行為者が性的意図を有していたのであれば、わいせつ行為と判断されやすくなります。他方で、単なるふざけあいの延長で触ったのであって、性的意図はなかったということであれば、わいせつ行為と判断される可能性は低くなるでしょう。

 

強制わいせつの取調べで性的意図について聞かれた時の対処法

強制わいせつの容疑で取調べを受けているときに、性的意図について聞かれたらどう対応すればよいのでしょうか?

 

☑ 路上で女性の後をつけ胸を触った

☑ 酒に酔って知人女性の体を触った

☑ 公園で遊んでいた少女のお尻を触った

 

このような「誰が見てもわいせつな行為」と言えるケースでは、特別の事情がない限り、性的意図があったはずです。そのため「性欲を満たそうと思っていました」と正直に話せばよいでしょう。

 

平成29年の最高裁判例により、このようなケースでは性的意図は不要とされたため、そもそも性的意図を否認する意味がないということになります。

 

一方、次のような「わいせつ行為と言えるかどうか微妙なケース」では、性的意図の有無によって、強制わいせつ罪の成否が変わってくることがありますので、性的意図がなかったのであれば、きっぱりと否認すべきです。仮に性的意図があったとしても黙秘するという選択肢もあります。

 

☑ シッターとして入浴介護中に幼児の陰部を触った

☑ 親戚とふざけあっている状況で体を触った

 

まずは刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

 

 

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