路上痴漢は強制わいせつ罪か迷惑防止条例違反か?

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

路上痴漢は強制わいせつ罪か迷惑防止条例違反になる

☑ 自転車で追い抜きざまにお尻を触った

☑ 路上で見かけた女性に抱きついた

☑ 女性を路上に押し倒して胸をもんだ

 

 

このような路上痴漢をして警察に捕まった場合、強制わいせつ罪とみなされるケースと都道府県の迷惑防止条例違反とみなされるケースがあります。

 

 

強制わいせつ罪は暴行を用いて被害者にわいせつな行為をしたときに成立します。<暴行→わいせつ行為>というように、暴行が常にわいせつ行為に先行する必要はなく、わいせつ行為自体が暴行と評価される場合も強制わいせつになります。路上痴漢は後者のタイプです。

 

 

一方、迷惑防止条例違反は、公共の場所で痴漢をした場合に成立します。路上は誰でも通行できる公共の場所ですから、路上痴漢は迷惑防止条例違反とみなされることもあります。

 

 

路上痴漢-強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の3つの違い

路上痴漢は、強制わいせつ罪で立件されるケースと迷惑防止条例違反で立件されるケースがありますが、2つの犯罪を比べると次の3つの違いがあります。

 

 

1.強制わいせつ罪の方が刑罰が重い

強制わいせつの刑罰は懲役6か月~10年です。迷惑防止条例違反は、通常、懲役1~6か月または50万円以下の罰金です。

 

 

強制わいせつ罪で起訴され有罪判決が下されると必ず懲役刑になりますが、迷惑防止条例違反には罰金刑もあることから、起訴されても略式裁判→罰金という流れで速やかに終わることが多いです。

 

 

2.強制わいせつ罪の方が逮捕されやすい

強制わいせつ罪の方が迷惑防止条例違反より刑罰が重いため、警察に「重い刑罰を避けるために逃亡する可能性が高い」と判断されやすくなります。そのため、強制わいせつ罪で立件されると、逃亡を防ぐために逮捕される可能性が高くなります。

 

 

3.強制わいせつ罪だとケガをさせたときに実刑になることも

路上痴漢が強制わいせつ罪とみなされた場合、路上痴漢により被害者を転倒させケガをさせると、強制わいせつ致傷罪として扱われます。

 

 

強制わいせつ致傷は最高刑が無期懲役であり、裁判員裁判で審理されます。実際に無期懲役になることはまずありませんが、初犯でも実刑になることは多々あります。

 

 

これに対して、路上痴漢が迷惑防止条例違反とみなされた場合は、被害者にケガをさせたとしても、迷惑防止条例違反と傷害罪が成立するにとどまります。傷害罪にも罰金刑があるため、初犯で軽傷であれば、起訴されても、ふたつまとめて略式裁判→罰金刑となる可能性が高いです。

 

 

路上痴漢が強制わいせつ罪になるか迷惑防止条例違反になるかの基準

上で説明したように、路上痴漢が強制わいせつ罪とみなされるのか、迷惑防止条例違反とみなされるかで、その後の手続や刑罰に大きな違いがあります。

 

 

それでは、どのような場合に路上痴漢が強制わいせつ罪とみなされるのでしょうか?

 

 

電車内の痴漢については、下着の中に手を入れると強制わいせつ罪、服の上からだと迷惑防止条例違反として取り扱われますが、路上痴漢については明確な基準はありません。

 

 

とはいえ、実務では一定の傾向があります。以下、接触した部位、接触した時間、被害者の年齢という3つの観点から見ていきましょう。

 

 

路上痴漢に強制わいせつ罪が成立する?3つの観点から弁護士が分析

1.接触した部位

お尻やふとももを触った場合は迷惑防止条例違反で立件されることが多いです。一方、胸を触った場合、とくに胸をもんだ場合やわしづかみにした場合は強制わいせつ罪で立件されるのが通常です。

 

 

唇やその周辺にキスをした場合も強制わいせつ罪で立件されることが多いです。キスをしようとしたができなかった場合は強制わいせつ未遂になります。

 

 

2.接触した時間

路上痴漢をする加害者は被害者に触ってすぐに逃げることが多いため、ほとんどのケースで接触時間は1秒以内から数秒程度です。接触時間がこれより長くなるのは、被害者が転倒して加害者が覆いかぶさる場合か、被害者を背後から抱きしめるケースです。

 

 

覆いかぶさりや抱きしめ行為があると、それらの行為が暴行となり、強制わいせつ罪として立件される可能性が高くなります。

 

 

3.被害者の年齢

お尻や太ももを一瞬触った場合でも被害者が13歳未満であれば、強制わいせつ罪として立件されやすくなります。

 

 

被害者が13歳以上の場合、強制わいせつ罪が成立するためには、触る行為自体が暴行と評価される必要がありますが、13歳未満の被害者については、強制わいせつの要件から暴行が除外されているため、わいせつな行為であれば、それが暴行と評価される必要はないためです。

 

 

電車内の痴漢であれば服の上から胸を触った場合、迷惑防止条例違反として立件されることが多いですが、路上痴漢であれば服の上から胸を触った場合、強制わいせつ罪として立件されることが多いです。どうして同じ行為であっても扱いが異なるのでしょうか?

 

強制わいせつの「わいせつ行為」に該当するか否かについては、行為の時間や場所、周囲の状況も判断材料になりますが、路上痴漢の場合は、電車内での痴漢と異なり、深夜、周囲に人がいない状況で行われることが多いため、「わいせつ行為」と評価されやすくなるためです。

 

 

 

路上痴漢が強制わいせつ罪で立件された場合の弁護活動

電車内の痴漢と異なり、路上痴漢が強制わいせつ罪になるのか迷惑防止条例違反になるのかについて明確な基準はありません。

 

 

そのため、着衣の上からお尻を一瞬触ったようなケースでも、警察の判断で強制わいせつ罪として立件されることがあります。

 

 

このような場合は、弁護士が警察署長や検察官に意見書を提出し、罪名を迷惑防止条例違反へ変更するよう要請します。こうした活動により、当初は強制わいせつ罪で立件されていたものの、後に迷惑防止条例違反に変更されることもあります。

 

 

胸をもんだ場合など強制わいせつ罪とみなされてもやむを得ない場合であっても、路上痴漢のケースでは被害者と示談できれば不起訴になる可能性が高いです。

 

路上痴漢では、服の上から被害者の身体を一瞬触って逃げることが多いですが、このような手口は、室内で長時間にわたってわいせつ行為をしたようなケースと比べると、極めて悪質とまではいえないためです。

 

 

 

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