クレプトマニア(窃盗症)

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

クレプトマニアとは

☑万引きがやめられない。

☑どうして盗んだのか自分でもわからない。

☑また妻が万引きで逮捕された。このままでは家庭が崩壊してしまう。

 

このようなケースではクレプトマニアの可能性を考える必要があります。クレプトマニアとは、衝動をコントロールすることができず、悪いこととわかっていながら、窃盗を繰り返してしまう精神障害のことです。「窃盗症」ともいいます。

 

一般的に女性の方が男性よりクレプトマニアになりやすいと言われています。

 

クレプトマニアの方は、ふだんは真面目な主婦や会社員が多く、窃盗以外に反社会的行為がみられないことが多いです。クレプトマニアの方は、繰り返し物を盗んでしまいますが、その理由を説明できないことが少なくありません。

 

窃盗の手口としては、大部分が万引きであり、被害金額も数千円にとどまることが多いです。

 

クレプトマニアの診断基準

精神医学の現場では、さまざまな精神疾患の診断基準としてDSMというマニュアルがよく利用されています。

 

DSMはアメリカの精神医学会が発表しているものですが、その最新版であるDSM-5には、クレプトマニアの診断基準として以下の5点が挙げられています。

 

A 個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。

B 窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり

C 窃盗に及ぶときの快感、満足または解放感

D その盗みは怒りまたは報復を表現するためのものではなく、妄想または厳格への反応でもない

E その盗みは、素行症、躁病エピソード、または反社会性パーソナリティ障害ではうまく説明されない。

 

これらの特徴に該当すれば、クレプトマニアである可能性が高いです。ただ、この診断基準は絶対的なものではありません。DSM-5の基準によれば、とった物を個人的に使う目的が少しでもあれば、①の基準を満たさず、クレプトマニアではないということになります。

 

しかし、常習的な窃盗者のなかには、スーパーで食料品を万引きし、自分で食べたり、家族に食べさせたりする人が少なくありません。

 

赤城高原ホスピタルの竹村道夫医師も「診断基準Aは、窃盗の主たる動機が、その物品の用途や経済的価値でなく、衝動制御の問題にあるという意味に許容範囲を広く理解すべきである。」と述べています(BRAIN and NERVE第68巻第10号別刷)。

 

クレプトマニアと摂食障害

クレプトマニアは、過食症や拒食症といった摂食障害を合併しているケースが多いです。順番としては、摂食障害にかかった後に、クレプトマニアを発症するのが通常ですが、両者の関連性についてはよくわかっていません。

 

クレプトマニアと摂食障害を合併している方には、物をどんどんため込んでいくという「ためこみ症状」がみられることも多いと言われています。

 

ウェルネスの弁護士が担当したケースでも、冷蔵庫の中に大量の食品が入っていたり、使わないのに同じ電化製品を何台も持っている方がいました。

 

クレプトマニアの治療

(1)医療機関での治療

クレプトマニアは精神疾患ですから、個人の意思だけで克服することはできません。

 

裁判官の前で「もう二度と万引きしません」といって執行猶予判決が下されたにもかかわらず、1週間後に万引きをして逮捕されるというケースもあります。クレプトマニアを克服するためには、専門の医療機関で継続的に治療を受ける必要があります。

 

関東圏でクレプトマニアの治療を手がけている医療機関を以下の表にまとめました。

 

名称

所在地

電話番号

赤城高原ホスピタル 

群馬県渋川市赤城町北赤城山1051

0279-56-8148

京橋メンタルクリニック

東京都中央区京橋1丁目2−4 YNビル8F

03-5203-1930

榎本クリニック

東京都豊島区西池袋1-2-5

03-3982-5321

大石クリニック

神奈川県横浜市中区弥生町4-41大石第一ビル

045-262-0014

赤城高原ホスピタルは入院治療がメインとなります。その他の医療機関は通院形式です。クレプトマニアを手がけている医療機関はまだまだ数が少ないため、なかなか予約がとれないこともあるようです。

 

更生を決意したら、なるべく早めに電話をして初診の予約をとった方がよいでしょう。

 

(2)自助グループへの参加

自助グループとは、共通の悩みを持った人たちが集まり、定期的に開催されるミーティングを通じて、自らの体験や思いを語り合いながら、更生をめざしていく団体です。

 

アルコール依存症や薬物依存症など悩みごとに自助グループが存在します。クレプトマニアについても複数の自助グループが存在します。参加費用は無料か実費程度のことが多いです。ミーティングに参加するかどうかは本人の自由です。参加を強制されることはありません。

 

自助グループの参加者の中には、クレプトマニアによって家庭が崩壊し全てを失った方もいるでしょう。逆に、そのような状態から立派に更生して、社会で活躍している人もいるでしょう。

 

そのような方々と話し合うことによって、悩んでいるのは自分ひとりではないということを実感し、「自分でも更生できるんだ」と前向きな気持を持てるようになります。

 

クレプトマニアの刑事弁護

(1)クレプトマニアと取調べ

クレプトマニアの方は、自分がどうして盗みをしたのか説明できないことが多いです。

 

とはいえ、取調官に対して、「どうして盗んだのかわかりません。」と言っても、なかなか納得してくれません。取調官としては、「買い物代を節約したかったので盗みました。」等とわかりやすい理由を供述調書に書きたがります。

 

もし取調官のプレッシャーに負けて、そのような調書を作ってしまうと、後の裁判でクレプトマニアであることを主張しても、裁判官に納得してもらうことが難しくなります。弁護士が本人をサポートし、「説明できないものは説明できない」と取調官にはっきりと述べてもらうことが大切です。

 

(2)クレプトマニアと再度の執行猶予

執行猶予期間中に再び万引きをして起訴された場合は、原則として実刑判決になります。例外的に、①新たな窃盗が1年以下の懲役で、②情状に特に酌量すべきものがあるときに限り、再度の執行猶予を獲得できる余地があります。

 

ご本人としては、早い段階から医療機関へ通院し、自助グループへ参加すべきです。その上で、弁護士がご本人の取組みを証拠化していくことになります。

 

例えば、ウェルネスの弁護士は、ご本人が通院したり、自助グループに参加するたびに、ご本人に報告書を書いてもらい、診断書や領収証と一緒に、証拠として裁判所に提出しています。

 

逮捕・勾留されている場合は、保釈されてからの動きだしになりますので、起訴直後に保釈をとれるよう、起訴前から入念に準備しておきます。

 

【関連ページ】

窃盗

万引き

窃盗の解決事例

万引きの解決事例

窃盗のご質問

刑事事件の法律相談24時間受付

03-5577-3613

お問い合わせ

オーダーメイドの法律事務所

ウェルネス法律事務所

【大きい地図を見る】