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鍼灸師・マッサージ師・整体師の不同意わいせつ事件について弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
鍼灸師・マッサージ師・整体師と不同意わいせつ罪
鍼灸師・マッサージ師・整体師が正当な施術であると見せかけて、患者の胸をもんだり陰部を触ったりした場合は、不同意わいせつ罪が成立します。
不同意わいせつ罪は、有効な同意がない状況でのわいせつ行為を処罰する犯罪です。2023年の刑法改正で新たに創設された犯罪で、同年7月13日以降の行為について適用されます。
*それ以前の行為については準強制わいせつ罪が適用されます。
不同意わいせつ罪の要件は複数ありますが、その中の一つに「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、わいせつな行為をした」という要件があります。
鍼灸師・マッサージ師・整体師が正当な施術を装って患者にわいせつな行為をした場合、この要件に該当し、不同意わいせつ罪が成立します。罰則は懲役6か月~10年です。
【刑法】
~以下省略~
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【鍼灸師・整体師・マッサージ師の不同意性交等事件】 昨年の改正刑法により不同意性交等罪が創設されました。不同意性交等罪の刑罰は懲役5年~20年と不同意わいせつ罪よりも格段に重くなっています。
不同意性交等罪の「性交等」には、性交(レイプ)以外に、膣に手指を入れることも含まれます。
そのため、鍼灸師・整体師・マッサージ師が正当な施術を装って、膣内に手指を入れた場合は、不同意性交等罪が成立します。 |
鍼灸師・マッサージ師・整体師の不同意わいせつ事件と逮捕
鍼灸師・マッサージ師・整体師が患者にわいせつ行為をした場合、被害届が出されて刑事事件になれば、不同意わいせつで逮捕される可能性が高いです。なぜそのように言えるのでしょうか?
逮捕の要件として逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれがあります。
不同意わいせつ罪は、性犯罪のなかで不同意性交等罪に次いで刑罰が重く、初犯で実刑になることもあります。そのため、被疑者に逃亡する意図がなくても、検察官や裁判官から逃亡のおそれがあると判断されやすいです。
証拠隠滅のおそれについては、電車内での痴漢事件のように被害者が見知らぬ人というわけではなく、個人情報を把握している患者であるため、検察官や裁判官から「被害者に接触し自己に有利な方向へ供述を変えさせようとするのでは。」と判断されやすいです。
そのため、いったん刑事事件になれば逮捕される可能性が高いです。同様の理由で勾留される可能性も高いです。
鍼灸師・マッサージ師・整体師の不同意わいせつ事件-不起訴を獲得する方法
不同意わいせつで逮捕・勾留されても、勾留期間内に被害者との間で示談が成立すれば、釈放されて不起訴になる可能性が高いです。この点は通常の不同意わいせつ事件でも、鍼灸師・マッサージ師・整体師の不同意わいせつ事件でも同じです。
不起訴とは刑事裁判にかけないことです。裁判にならないので処罰されることはなく、前科もつきません。
不起訴を獲得するためには、最長20日の勾留期間内に被害者との間で示談をまとめる必要があります。この期間内に示談が成立しない場合は起訴される可能性が高くなります。
いったん起訴されると、その後に示談が成立してもさかのぼって不起訴になるわけではありません。そのため、逮捕されれば早期に弁護士に依頼して示談交渉に入る必要があります。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説
鍼灸師・マッサージ師・整体師の不同意わいせつ事件-逮捕された場合のデメリット
1.休診が必要になる
鍼灸師・マッサージ師・整体師の不同意わいせつが事件化すると、逮捕・勾留される可能性が高くなります。
逮捕・勾留されるとしばらくの間、業務を行うことができなくなるので、スタッフに予約済みの患者への連絡や休診の告知をしてもらう必要があります。
2.他の患者に連絡が入ることも
逮捕されると治療院や自宅の捜索が実施され、他の患者の分も含めカルテ等の資料が押収されます。逮捕前に押収されることもあります。
警察は押収した資料をもとに、事件と関係のない女性患者にも連絡を入れ、「何か変なことをされませんでしたか?」等と事情聴取することがあります。この聴取がきっかけとなり、別件で再逮捕されることもあります。
⇒再逮捕とは?報道や執行猶予との関係など「気になること」を全解説
3.報道されることも
鍼灸師・マッサージ師・整体師が不同意わいせつで逮捕されると、治療院の名前と共に実名報道されることがあります。実名報道されるとその後に不起訴になっても、事実上、営業再開が難しくなります。
鍼灸師・マッサージ師・整体師の不同意わいせつ-逮捕を回避する方法
鍼灸師・マッサージ師・整体師が施術中にわいせつ行為をした場合、事件化する前に患者からクレームの連絡が入ったり、患者が保健所に相談することによって保健所から連絡が入ることがあります。
わいせつ行為について心当たりがあれば、この時点で患者と交渉し示談をした方がよいです。被害届が出される前に示談をすれば、刑事事件にはなりません。事件化を阻止できれば、逮捕されることも報道されることもありません。
性犯罪事件で加害者が被害者と直接交渉しようとすると、被害者を怖がらせてしまい、かえって事件化しやすくなります。示談交渉は弁護士に依頼するようにしてください。
わいせつ行為について心当たりがなければ、相手がお金目当てで虚偽の主張をしている可能性があります。
この場合は先に警察に相談したり、相手に対してそのような事実はない旨の内容証明郵便を発送することが考えられます。いずれにしてもまずは弁護士にご相談ください。
鍼灸師・マッサージ師と業務停止・免許取消
鍼灸師は「はり師」、「きゅう師」の国家資格を有しています。マッサージ師も「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を有しています。
*整体師には国家資格はありません。
鍼灸師やマッサージ師が不同意わいせつ事件で逮捕・起訴された場合、「罰金以上の刑に処せられた者」(3条3号)として、厚生労働大臣によって業務停止とされたり免許を取り消されることがあります。
不起訴になったとしても、「業務に関し犯罪又は不正の行為があった者」(3条4号)として、業務停止や免許取消の処分を受けることがあります。
【あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律】 第三条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。 一 心身の障害によりあん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの 二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者 三 罰金以上の刑に処せられた者 四 前号に該当する者を除くほか、第一条に規定する業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者
第九条 施術者が、第三条各号の一に掲げる者に該当するときは、厚生労働大臣は期間を定めてその業務を停止し、又はその免許を取り消すことができる。 ② 前項の規定により免許を取り消された者であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えることが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。 |
被害届が出される前に被害者との間で示談が成立すれば、事件化することはないため、「罰金以上の刑に処せられた者」(3条3号)には該当しません。
「業務に関し犯罪又は不正の行為があった者」(3条4号)に該当する可能性はありますが、当事者間で示談がまとまれば、そもそも事件が公になることはないため、この規定で処分される可能性は低くなります。
そのため、業務停止にも免許取消になることもなく、施術を行っていくことができます。
不同意わいせつに強い弁護士が解説!