盗撮の示談について弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

盗撮事件における示談の位置づけ

盗撮で検挙された場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴の可能性が非常に高くなります。たとえ盗撮の余罪があっても、前科・前歴がなければ、ほとんど全てのケースで不起訴になります。

 

盗撮事件で最も影響を受けたのは被害者です。そのため、検察官は、加害者を処分するにあたって、被害者の思い(処罰感情)を最も重視します。検察官は、処分を下す前に被害者と話をして、処罰感情が次の3つのどれになるかを確認します。

 

【3つの処罰感情】

① 加害者の処罰を求めない

② 検察官に処罰するか否かを任せる

③ 加害者の処罰を求める

 

示談が成立して被害者に許してもらえれば、被害者の処罰感情は①となり、不起訴の可能性が高くなります。

 

逆に示談が成立しない場合は、被害者の処罰感情は③になるのが通常です。この場合、検察官が不起訴にすることは考え難いです。仮に処罰感情が②であったとしても、よほどの事情がない限り、不起訴にはならないでしょう。

 

そのため、盗撮で不起訴を獲得するためには、被害者との間で示談を成立させる必要があります。

 

盗撮の示談の流れ

1.捜査担当者に被害者への取次ぎを依頼する

弁護士が警察の担当者に電話して、「依頼者が被害者にお詫びをして示談をさせていただきいと言っております。お手数ですが被害者に電話して、電話番号を教えていただけないか確認してもらえますでしょうか?」等と言って取次ぎを依頼します。

 

既に送検されている場合は、担当の検察官に取次ぎを依頼します。

 

2.担当者が被害者に電話し意向を確認する

担当者が被害者に電話し、弁護士に電話番号を教えてもよいか確認します。被害者が未成年の場合は、被害者の親御様に意向を確認します。

 

被害者や親御様が「電話番号を教えてもいい」と言った場合、担当者が弁護士に電話して被害者の電話番号を教えてくれます。

 

3.弁護士が被害者と示談交渉する

示談交渉は対面が原則ですが、被害者が希望される場合は、メールやズーム、スカイプ、手紙のやりとり等で行うこともあります。弁護士が被害者のご希望にあわせて柔軟に対応します。

 

交渉の手順としては、まずは弁護士から被害者に謝罪文をお渡しします。示談金は加害者側から提案することになります。提案する金額については、示談金の相場や依頼者の経済状況を加味した上で決定します。

 

交渉期間はケースバイケースですが、短い場合で数日、長い場合は1か月程度かかることもあります。

 

4.示談成立

被害者が指定する場所に弁護士が伺い、示談書への調印と引き換えに示談金をお渡しします。被害者が郵送でのやりとりを希望される場合は、示談書2部を郵送し、1部が返送された後に弁護士が指定された口座に示談金を振り込みます。

 

5.捜査機関へ示談書を提出する

弁護士が示談書と示談金の領収証を警察の担当者に提出します。送検されている場合は、担当の検察官に提出します。

 

上記の流れで最も重要なのは②です。被害者から電話番号を教えてもらうことができれば、ほとんど全てのケースで示談が成立します(ウェルネスでは99%以上の確率で示談が成立しています)。

 

逆に電話番号を教えてもらえなかった場合は、被害者と話をすることできないため、示談が成立しないということになります。

 

そのため、「被害者から電話番号を教えてもらえるか否か」が最も重要な事情になります。ウェルネスでは9割前後の被害者から電話番号を教えてもらっています。他の法律事務所でもほぼ同様の傾向と思われます。

 

盗撮の示談の成功率を上げるための取組み

ウェルネスでは、もし被害者に電話番号を教えてもらえなかった場合は、そこであきらめるのではなく、検察官に被害者へ伝えてもらいたいことをまとめた上申書を提出し、再度の取次ぎを依頼します。

上申書

 

検察官は、通常、上申書に記載している内容をそのまま被害者に伝えてくれます。

 

☑ 住所や電話番号が加害者に知られてしまうのではないか?

☑ 仕事で忙しいのに弁護士と何度も話をするのは負担になる

☑ こちらからお金の話なんてしたくない

 

上申書の中で、このような被害者の思いをフォローすることによって、一度断られた被害者から電話番号を教えていただけることも少なくありません。

 

盗撮の示談金の相場

盗撮の示談金の相場は30万円から50万円です。

 

被害者側も示談交渉に入る前に、「盗撮 示談金 相場」等のキーワードでネット検索をして示談金の相場を調べていることが多いです。そのため、相場から大きく外れた金額になるケースはほとんどありません。

 

弁護士事務所の中には「盗撮の示談金相場は10万円前後」と説明しているところもあるようですが、10万円で示談が成立することはまずありません。

 

集客効果という点では、示談金をなるべく低く言った方が相談者を安心させることができるのでしょうが、真に受けてしまうと当初の予算を大幅に超えてしまうことにもなりかねませんのでご注意ください。

 

盗撮の示談書

盗撮の示談書の例は次の通りです。

 

 

示 談 書

 

 〇〇〇〇(以下「甲」という)と 〇〇〇〇(以下「乙」という)との間において、令和〇年〇月〇日、〇〇駅構内エスカレーター上において発生した、甲を被害者、乙を加害者とする盗撮事件(以下「本件」という)につき、以下のように示談が成立したので、示談成立の証として本書面2通を作成し、甲及び乙代理人各1通ずつ保管する。

 

1 乙は、甲に対し、本件について深く謝罪し、甲はこれを受け入れる。

2 乙は、甲に対し、本件の示談金として、金〇万円の支払義務があることを認める。

3 乙は、甲に対し、前項の金〇万円を本日支払い、甲はこれを受領した。

4 乙は、甲に対し、今後、故意に甲に近づかないことを誓約する。

5 乙は、甲に対し、下記①ないし③を表明保証する。

①甲の画像データ(以下「本件データ」という)を、本件に使用したスマートフォン(以下「本件スマートフォン」という)以外の媒体に転送していないこと。

②本件データを、クラウド上に保存していないこと

③本件データを第三者(捜査機関の人間を除く)へ開示(SNS、電子メール、ショートメール、電子掲示板等のインターネットを通じて開示する行為を含む)していないこと

6 乙は、甲に対し、本件スマートフォンが返還される際、同スマートフォンに本件データが保存されていれば、警察官の面前で、同データを削除することを誓約する。

7 甲と乙は、本件及び本示談書の内容につき、捜査機関の担当者に開示するなど合理的な理由のある場合を除き、第三者(甲乙の家族を除く)へ開示しないことを誓約する。

8 甲は、本件について、乙を許すこととし、捜査機関に提出した被害届を取り下げる。

9 甲と乙は、本示談書記載のほか、甲乙間に何らの債権債務が存しないことを相互に確認する。

以 上

令和  年  月  日

 (甲)

東京都~

〇〇 〇〇 印

 

(乙代理人)

東京都~

〇〇法律事務所

 弁護士 〇〇 〇〇 印

 

盗撮の被害者の多くは個人情報が加害者側に開示されないことを希望しますので、グレーの網掛け部分をマスキングした写しを依頼者に交付し、示談書の原本は弁護士が保管します。

 

盗撮の示談書の3つのポイント

盗撮の示談書を作成する上で重要なポイントは以下の3つです。

 

1.加害者に対する被害者の不安を払しょくする

「警察に通報したことで加害者に復讐されるのではないか?」-多くの被害者がこのような不安を抱いています。

 

そのため、示談書には接触を禁止する条項を入れます(第4項)。被害者の不安が強い場合は次のような違約金条項を設定します。

 

乙が前項に違反した場合、乙は、甲に対し、違約金として、違反行為1回につき金〇万円を支払う。

 

接触禁止条項には「故意に」という文言を入れていますので、偶然出くわした場合にまで、違約金を支払う必要はありません。

 

また、被害者が人違いで「つきまとわれた」と言ってきても違約金を支払う必要はありません。違約金を支払う必要があるのは、接触した状況を撮影した動画など確実な証拠がある場合に限られますので、加害者側にとっても不利益はないといえるでしょう。

 

2.盗撮画像についての被害者の不安を払しょくする

盗撮の被害者は次のような不安を抱いています。

 

① 盗撮画像がメール等によってスマートフォンから別の媒体に移されていないか?

② 盗撮画像がクラウド上にも保存されているのではないか?

③ 盗撮画像が、LINEやTwitter等によって第三者に拡散していないか

 

これらの不安を払拭するために第5項のような表明保証条項を示談書に含めます。被害者の不安が強いようであれば、次のような違約金条項を設定することもあります。

 

前項の表明保証に反する事実が判明した場合、乙は、甲に対し、違約金として、金〇万円を支払う。

 

盗撮に使用したスマートフォンは警察に押収されますが、いずれ返還されます。「盗撮画像が入ったまま返還されてしまうのでは?」という被害者の不安を払拭するため、第6項のような条項を示談書に含めます。

 

3.宥恕文言を入れる

宥恕文言(ゆうじょもんごん)とは「許す」という言葉のことです。示談書の中に「許す」という言葉が入っていれば、不起訴になる確率が飛躍的に上昇します。

 

盗撮のケースでは、前科・前歴がなければ、ほぼ確実に不起訴になるといってもよいでしょう。そのため、示談書には宥恕文言を是非とも入れておきたいところです。

 

示談書に「許す」と書いているからと言って、心の底から許さなくてはいけないというわけではありません。内心の気持ちのありようを強制することはできません。

 

被害者が、検察官から「示談書に許すと書いていますが間違いないですか?」と聞かれたときに「間違いありません。」と答えていただくだけで十分です。

 

もし被害者が「許す」という言葉を入れることに納得されない場合、「刑事処罰を求めない」という文言があるだけでも、不起訴になる確率は非常に高いです。

 

ただ、「許す」という言葉も「刑事処罰を求めない」という言葉もなければ、示談が成立しても不起訴にはならない可能性が高くなってきます。少なくともどちらかの文言を入れることは必須といえるでしょう。

 

盗撮事件で示談なしで不起訴を狙えるケース

盗撮事件で示談なしで不起訴になる余地があるのは、次のような被害者が特定されていないケースです。

 

【被害者が特定されていない盗撮事件】

駅のエスカレーター上で前に立っていた女性を盗撮したところ、後ろに立っていた男性に見つかり、駅員に突き出され警察署に連行された。盗撮の被害者は自分が盗撮されたことに気づかず、そのまま立ち去ってしまった。

 

このようなケースでは、通常、警察が防犯カメラを駆使して積極的に被害者を見つけ出すわけではありません。そのため、最後まで被害者は特定されませんので、示談をすることができません。

 

ただし、次の4つの活動を組み合わせることによって不起訴処分となる余地があります。

 

① 反省文の作成

② クリニックへの通院

③ 両親や妻などによる監督プランの作成

④ 贖罪寄付

 

また、自首をしていれば不起訴の可能性はかなり高くなります。

盗撮で自首して逮捕・報道を回避する

 

一方、被害者が特定されているケースでは、示談が成立しなければ、上記4つの活動を全て行っても不起訴を獲得するのは難しくなります。逆に示談が成立すれば、上記4つの活動を何もしなかったとしても不起訴になる可能性が非常に高いです。

 

そのため、被害者が特定されている盗撮事件では、被害者と示談交渉をすることが最優先の弁護活動となります。

 

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