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覚醒剤取締法違反の罰則や逮捕後の流れ、執行猶予について弁護士が解説

【この記事の作成者】 弁護士 楠 洋一郎(第二東京弁護士会所属 / 第39896号) 【事務所名:ウェルネス法律事務所】
刑事事件の弁護士経験15年以上。これまで約3000件の刑事事件を取り扱ってきました。
覚醒剤・薬物事件の豊富な実務経験に基づき解説しています。 |
このページは覚醒剤取締法違反の罰則や逮捕後の流れ、起訴の見込み等を解説しています。不起訴・執行猶予を獲得するための弁護活動や覚醒剤事件に強い弁護士の選び方、弁護士費用については以下のページをご覧ください。
目次
覚醒剤とは?
覚醒剤とは、フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパンまたはその塩類等です。見た目は白色または透明の結晶状の粉末です。隠語で「シャブ」、「エス」、「スピード」、「アス」等とも呼ばれています。
覚醒剤には興奮作用がありますが、依存性が強く、幻覚・妄想などの副作用があり、錯乱して死亡することもあります。近年、SNSを通じて広くまん延しており、社会問題になっています。
覚醒剤取締法違反の罰則は?
覚醒剤は覚醒剤取締法によって規制されています。覚醒剤取締法違反の罰則は拘禁刑が基本です。営利目的がある場合は拘禁刑に加えて罰金が科されることがあります(「併科」といいます)が、罰金だけで済むことはありません。また、押収された覚醒剤は没収されます。
拘禁刑とは従来の懲役刑と禁錮刑に代わって2025年6月1日から新たに導入された刑罰です。これまでの懲役刑と異なり刑務作業が義務とされておらず、受刑者の状況に応じて柔軟に刑務作業を科したり更生プログラムを受けさせることができる刑罰です。
1.覚醒剤使用の罰則
覚醒剤を使用した場合の罰則は10年以下の拘禁刑です。
2.覚醒剤所持の罰則
覚醒剤を所持した場合の罰則は10年以下の拘禁刑です。
3.覚醒剤譲渡・譲受の罰則
覚醒剤を譲り渡したり譲り受けた場合の罰則は10年以下の拘禁刑です。
4.覚醒剤製造の罰則
覚醒剤を製造した場合の罰則は1年~20年の拘禁刑です。何もなかったところから新たに覚醒剤という害悪を生みだすことから、使用や所持などに比べて重い刑罰が科されます。
5.覚醒剤輸出・輸入の罰則
覚醒剤を輸出したり輸入した場合の罰則は1年~20年の拘禁刑です。輸出や輸入という形で外から覚醒剤を持ち込むことによって社会に害をもたらすことから、使用や所持などに比べて重い刑罰が科されます。
⇒覚醒剤の輸入で逮捕されたら?不起訴となる事例や方法について弁護士が解説
覚醒剤取締法違反(営利目的あり)の罰則は?
営利目的がある場合は、営利目的がない場合に比べて、利益を得るためにより多くの覚醒剤を流通させ社会に害を与える可能性が高くなるため、罰則も重くなります。
1.【営利目的あり】覚醒剤の所持・譲渡・譲受の罰則
営利目的で覚醒剤を所持したり、譲り渡したり、譲り受けた場合の罰則は、1年~20年の拘禁刑です。情状により500万円以下の罰金が併科されることもあります。
2.【営利目的あり】覚醒剤の製造・輸出・輸入の罰則
営利目的で覚醒剤を製造したり、輸出したり、輸入した場合の罰則は、3年~20年の拘禁刑または無期拘禁刑です。情状により1000万円以下の罰金が併科されることもあります。
【覚醒剤取締法】
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覚醒剤事件の逮捕率は?

覚醒剤はトイレに流したりして証拠隠滅することが容易です。また、被疑者が、覚醒剤の取引相手と口裏合わせをして証拠を隠滅することも考えられます。
そのため、覚醒剤事件の被疑者は、「証拠隠滅のおそれがある」として逮捕されやすいです。2024年に刑事事件として取り扱われた覚醒剤取締法違反のうち、被疑者が逮捕されたケースは71%、勾留されたケースは99%、勾留が延長されたケースは66%です。
【逮捕率・勾留率の根拠】
2024年版検察統計年報:罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員
【勾留延長率の根拠】
2024年版検察統計年報:罪名別 既済となった事件の被疑者の勾留後の措置、勾留期間別及び勾留期間延長の許可、却下別人員
覚醒剤事件で逮捕された後の流れは?

1.逮捕~勾留までの流れ
覚醒剤事件で逮捕されると、逮捕の翌日か2日後に検察庁に連行され、検察官の取調べを受けます。検察官が裁判官に対して勾留請求を行うと、当日中か翌日に裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。
裁判官は検察官から提出された捜査資料を検討したり、勾留質問で被疑者の話を聞いた後に勾留するか釈放するかを決めます。
覚醒剤取締法違反で逮捕された後に勾留される確率は99%です(2024年版検察統計年報)。勾留が決まった場合は、原則10日にわたって留置場で拘束されます。
2.勾留が延長されることも
捜査上やむを得ない理由があるとして、検察官が裁判官に勾留の延長を請求しこれが許可されれば、最長10日の範囲で勾留が延長されます。
そのため、起訴前勾留の期間は最長で20日になります。覚醒剤取締法違反で勾留が延長される確率は66%です(2024年版検察統計年報)。
3.起訴・不起訴の決定
検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放するかを決めなければなりません。被疑者を起訴しない場合は、いったん処分保留で釈放しその後に不起訴にすることが多いです。
⇒処分保留釈放とは?タイミングや起訴・不起訴との関係について
起訴されれば刑事裁判を受けることになります。覚醒剤取締法違反の起訴率は74%です。
【根拠】
2024年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
覚醒剤取締法違反には罰金がありませんので、起訴されれば正式裁判で審理され、検察官から拘禁刑を請求されます。
覚醒剤事件で執行猶予はとれる?

覚醒剤取締法違反で起訴され一審で執行猶予がつく確率は36%です。
*根拠…令和6年司法統計年報
初犯の方が覚醒剤の使用罪や所持罪で起訴された場合は、拘禁刑1年6月・執行猶予3年程度の判決になることが多いです。
執行猶予中の方が再犯をした場合は、かなり高い可能性で実刑になります。再度の執行猶予を狙うのであれば、依存症治療のクリニックに入院するなどの徹底した再犯防止策を実行することが必要です。
営利目的の事案で起訴された場合は、初犯の方であっても実刑になることが少なくありません。執行猶予を獲得するためには 密売グループとの関係を完全に断ち切ることが必要です。
営利目的の覚醒剤輸入罪で起訴された場合、押収された覚醒剤の重量が1キロを超えると5年以上の拘禁刑になる可能性が高いです。
覚醒剤取締法違反の逮捕・起訴-所持・使用・譲渡・譲受・輸入
1.覚醒剤の所持

覚醒剤の所持は現行犯逮捕が基本です。捜査員が家宅捜索や所持品検査により白色粉末を発見すれば、その場で「MXチェッカー」という検査キットを使って予試験を行います。予試験で覚醒剤の陽性反応が出れば、被疑者を覚醒剤所持で現行犯逮捕します。
⇒現行犯逮捕とは?逮捕状なしで誰でもできる逮捕を弁護士が解説
覚醒剤所持で逮捕されれば原則として起訴されます。
不起訴になる例として、押収された覚醒剤がごく微量の場合や、同居人と一緒に逮捕されたケースで、もっぱら同居人が覚醒剤を管理しており本人は覚醒剤がどこにあるか全く知らなかった場合が挙げられます。
2.覚醒剤の使用

覚醒剤使用のケースは逮捕状を示してする通常逮捕が基本です。
職務質問や家宅捜索をきっかけとして、捜査員が「この被疑者は覚醒剤を使用している可能性がある」との嫌疑を抱くと、被疑者を警察署に連行し尿を採取します。
被疑者が任意に尿を出さない場合は、捜索差押令状を取得し、病院に連行してカテーテルで強制的に採尿することもあります。被疑者の尿は科捜研に送られ、覚醒剤の成分であるフェニルメチルアミノプロパンが含まれているか否か鑑定されます。
フェニルメチルアミノプロパンが含まれていれば、逮捕状を示され通常逮捕されます。
尿の採取から逮捕まで数日~3カ月程度かかることが多いです。意味不明な発言をしていたり暴れている場合など緊急性が認められる場合は、予試験で陽性反応が出れば、科捜研で鑑定結果が出る前に緊急逮捕します。
⇒緊急逮捕の要件は?現行犯逮捕との違いや緊急逮捕できる罪名一覧
覚醒剤の使用で逮捕された場合は、その後の捜査で「知らない間に覚醒剤を打たれた」等の特別な事情が判明しない限り、起訴されることになります。単独での使用で余罪もなければ、勾留が延長されずに起訴されることもあります。
3.覚醒剤の所持+使用

所持していた覚醒剤の一部を使用したケースでは、まず、押収した白色粉末について予試験が行われます。予試験で陽性反応が出れば覚醒剤所持罪で現行犯逮捕されます。
⇒現行犯逮捕とは?逮捕状なしで誰でもできる逮捕を弁護士が解説
その後、尿から覚醒剤の成分が検出されたときは、覚醒剤の使用で再逮捕されます。
⇒再逮捕とは?再逮捕されると罪が重くなる?執行猶予への影響も解説
覚醒剤所持罪で起訴された後に、使用罪で追起訴されることが多いですが、覚醒剤所持罪の勾留を延長した上で、使用罪についても再逮捕せずに捜査を進め、所持と使用で同時に起訴することもあります。
⇒追起訴とは?追起訴されやすい4つの犯罪や裁判の流れについて
4.覚醒剤の譲渡・譲受

覚醒剤で逮捕された第三者の供述やスマートフォンから売買の相手を特定できるときは、その相手を覚醒剤の譲渡や譲受で通常逮捕します。
覚醒剤の譲渡・譲受のケースでは、第三者の供述しかめぼしい証拠がない場合が多く、黙秘権を行使することにより、嫌疑不十分で不起訴になる余地が十分にあります。
ただ、自白調書をとられてしまえば起訴される可能性が高くなりますので、逮捕直後から弁護士のサポートを受けた方がよいでしょう。
5.覚醒剤の輸入

税関職員が空港で乗客の手荷物に異状を見つけた場合は、エックス線検査や解体検査を行います。
その結果、覚醒剤らしき物を発見すれば仮鑑定にかけます。そこで、覚醒剤の成分が検出されれば、被疑者を現行犯逮捕します。
⇒現行犯逮捕とは?逮捕状なしで誰でもできる逮捕を弁護士が解説
逮捕後の捜査の過程で「被疑者が覚醒剤であることを認識していなかった」という事情が判明しない限り、起訴されます。押収された覚醒剤の量が多ければ営利目的の輸入罪で起訴され、裁判員裁判で審理されます。
⇒覚醒剤の輸入で逮捕されたら?不起訴となる事例や方法について弁護士が解説
覚醒剤事件と保釈
覚醒剤事件の被疑者は、「証拠隠滅のおそれがある」として逮捕・勾留されやすく、勾留後に、弁護士が釈放させることも容易ではありません。そこで、釈放に向けた活動としては起訴後の保釈に重点を置くことになります。
覚醒剤は依存性が高いため、裁判官は、「保釈すればまた薬物に手を出すのではないか?」と考えます。
そのような疑いをもたれないよう、本人をしっかり監督できる人に身元引受人になってもらうことが必要です。初犯の方の場合、起訴前から保釈の準備をしておけば、起訴直後に保釈請求が許可される可能性が高いです。
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