【保釈】監督者とは?監督者保証金についても解説

刑事訴訟法が改正され新たに監督者制度が創設されました。このページは保釈に詳しい弁護士 楠 洋一郎が監督者制度の内容や監督保証金について解説しました。ぜひ参考にしてみてください!

 

 

 

監督者とは?

監督者とは保釈中の被告人を監督する第三者のことです。被告人の逃亡を防止し公判期日に出頭するよう監督します。

 

 

裁判所が保釈を許可するにあたって、必要と認める場合に、適当と認める者を監督者に選任します。監督者になることが想定されるのは、被告人の配偶者や親です。

 

 

監督者制度は、保釈中の逃亡を防止し裁判所への出頭を確保するため、2023年5月17日に公布された「刑事訴訟法の一部を改正する法律」によって新たに創設されました。

 

 

【刑事訴訟法】

第九十八条の四裁判所は、保釈を許し、又は勾留の執行停止をする場合において、必要と認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て監督者として選任することができる。

 

 

監督者保証金について

1.監督者保証金とは

保釈にあたって監督者として選任された場合は、裁判所に監督保証金を納付しなければなりません。保釈に際して監督者が選任された場合、保釈金と監督保証金の両方の納付があって初めて被告人が保釈されます。

 

 

2.監督者保証金はいくら?

監督保証金は監督者の資力や監督者と被告人との関係等の事情から、監督者の義務を保証するに足りる金額でなければならないとされています。

 

 

監督者保証制度はまだほとんど利用されていないため、保証金の相場もありません。監督保証金の金額については、監督者の資力が考慮要素とされていることから、被告人に資力がなく監督者に資力がある場合、監督保証金が保釈金を上回ることも考えられます。

 

 

3.監督者保証金を借りられる?

監督者保証金を準備できない場合、審査に通れば日本保釈支援協会から融資を受けることができます。

 

 

【刑事訴訟法】

第九十八条の五 監督者を選任する場合には、監督保証金額を定めなければならない。

②監督保証金額は、監督者として選任する者の資産及び被告人との関係その他の事情を考慮して、前条第四項の規定により命ずる事項及び被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。

 

 

監督者の義務は?

監督者は裁判所から以下の3つの全てまたはいずれかを命令されます。

 

 

①被告人が裁判所に出頭しなければならない時は被告人と一緒に出頭すること

②裁判所の指定する時期に被告人の住居や仕事、学校の状況など裁判所が定める事項について報告すること

③上記の事項に変更があった場合は変更内容を速やかに裁判所に報告すること

 

 

監督者が解任されるケース

監督者が次の3つのケースのいずれかに該当する場合、裁判所は監督者を解任することができます。

 

 

①監督者が裁判所の命令に違反したとき

②監督者が心身の故障により裁判所の命令を守れないとき

③監督者から解任の申出があったとき

 

 

上記の①に該当する場合は、裁判所は監督保証金を没収することができます。

 

 

監督者が解任されるとどうなる?

裁判所が監督者を解任した場合または監督者が死亡した場合は、裁判所は保釈を取り消さなければなりません。

 

 

ただし、裁判所が相当と認める場合は、新たに監督者を選任したり、保釈金を増額することによって、保釈を維持する道も残されています。

 

 

監督者と身元引受人との違いは?

保釈請求をするにあたって、通常、被告人の家族や友人に身元引受人になってもらい、「責任をもって監督します」といった身元引受書にサインしてもらい、弁護士が裁判所に提出します。

 

 

身元引受人も監督者も被告人が逃亡したり裁判を無断欠席しないよう監督するという意味では同じですが、ペナルティの有無が異なります。

 

 

身元引受人はたとえ被告人が逃亡したり裁判所に出頭しなくてもペナルティを負うことはありませんが、監督者は自身が納めた監督保証金が裁判所に没収されるという大きなペナルティを負うことになります。

 

 

監督者制度-保釈請求にどう活かす?

監督者には「命令に違反した場合、監督保証金を没収される」という大きなリスクがあることから、ノーリスクの身元引受人に比較して、より実効性のある監督を行うことができると考えられます。

 

 

これまでなかなか保釈が許可されなかった重大事件についても、弁護士が保釈請求をする際に裁判所に対して監督者の選任を求めることによって、保釈請求が許可される可能性が高まります。

 

 

監督者制度を利用するためには監督保証金が必要になってきますし、リスクもありますので、弁護士の方から候補者に対して、監督者制度について十分に説明しておく必要があります。