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逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
逮捕の種類は?種類によって流れが違う?
逮捕とは、逃亡や証拠隠滅を防ぐために強制的に被疑者の身柄を拘束する処分です。逮捕には裁判官の令状が必要な通常逮捕、令状が不要な現行犯逮捕、逮捕後に令状が必要となる緊急逮捕の3つがあります。
| 逮捕の要件 | 令状(逮捕状)の要否 |
通常逮捕 | ①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある ②逃亡・証拠隠滅のおそれがある | 必要 |
現行犯逮捕 | ①現に罪を行っている または ②現に罪を行い終わった | 不要 |
緊急逮捕 | ①死刑・無期・長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある ②急速を要する ③すぐに逮捕状を請求できない | 逮捕後速やかに裁判官に逮捕状を請求し発付される必要あり |
通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕は、要件や令状の必要性に違いはありますが、逮捕後の流れは基本的には同じです。
⇒現行犯逮捕とは?通常逮捕との違いや現行犯逮捕された時の対処法
逮捕後の流れは?ポイントをわかりやすく解説!
刑事事件の身柄拘束は逮捕⇒勾留⇒起訴後勾留という順番で進んでいきます。
逮捕(最長3日)
↓
勾留(最長20日)
↓
起訴後勾留(原則として2か月)
勾留とは逮捕に引き続いてなされる身柄拘束です。被疑者を勾留するためには、検察官が裁判官に勾留を請求し、裁判官がこの請求を許可する必要があります。常に検察官の請求が出発点になります。
勾留の期間は最長20日です。検察官は逮捕の期間とあわせて最長23日以内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。
勾留されている被疑者が起訴されれば、裁判官が改めて勾留の要件に該当するかを審査します。要件を満たすと判断すれば、起訴後勾留に移行します。起訴後勾留の期間は原則2か月です。これから各段階について詳しく解説していきます。
逮捕後の流れは?48時間以内に検察官に送致
警察(司法警察員)が被疑者を逮捕すると、犯罪事実の要旨や弁護人を選任する権利があることを伝え弁解の機会を与えます。私人に現行犯逮捕された被疑者を受けとった時も同様です。
被疑者の弁解を聞いて留置の必要がないと判断すると、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。引き続き留置の必要があると判断すると、48時間以内に被疑者の身柄を検察官に引き渡す手続をしなければなりません。この引き渡しのことを「送致」といいます。
通常は被疑者を護送バスに乗せて検察庁に連行することにより送致します。
実務では、午前8時30分より早い時間帯に被疑者を逮捕した場合は翌日に検察官に送致することが多いです。午前8時30分より遅い時間帯に逮捕した場合は翌々日に送致することが多いです。
逮捕後の流れは?検察官の勾留請求
送致を受けた検察官は、警察から引き継いだ捜査資料を読み込んだり、自ら被疑者の取調べを行い、勾留の要件を満たすか否かを検討します。
検察官が勾留の要件を満たさないと判断すると被疑者を釈放します。
⇒【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?
検察官が勾留の要件を満たすと判断すると、送致を受けたときから24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求します。
逮捕後の流れは?裁判官の勾留質問
検察官が勾留請求すると、被疑者は裁判所に連行されます。
通常は、検察官が勾留請求した当日に裁判所に連行されますが、東京都では被疑者の数が多く1日で検察庁と裁判所の両方に連行することができないため、勾留請求の翌日に裁判所に連行されます。
裁判官は捜査資料を検討した上で、被疑者から直接話を聞き、勾留の要件があるかどうかを審査します。この手続を勾留質問と言います。
⇒勾留質問とは?流れや勾留を阻止するための活動を弁護士が解説
裁判官が勾留の要件を満たさないと判断すれば、検察官の勾留請求を却下します。その結果、被疑者は釈放されます。
⇒【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?
裁判官も勾留の要件があると判断すれば、検察官の勾留請求を許可します。その結果、被疑者は勾留されます。
逮捕後の流れは?勾留されたらどうなる?
1.勾留は10日が原則
勾留の期間は原則10日です。10日の起算点は検察官が勾留請求した日です。請求当日も1日としてカウントします。
勾留請求 | 2月1日 |
勾留質問 | 2月2日 |
勾留満期 | 2月10日 |
検察官は10日の勾留期間内に被疑者を釈放するか、起訴しなければなりません。
2.勾留が延長されることも
捜査上やむをえない理由があれば、裁判官は検察官の請求により、勾留期間を10日の限度で延長することができます。
勾留が延長された場合、検察官は延長された期間内に被疑者を釈放するか起訴しなければなりません。実務ではほとんどの事件で勾留が延長されます。そのため、勾留延長が基本で、延長なしの勾留が例外のような位置づけになっています。
逮捕後の流れは?起訴されたらどうなる?
検察官は勾留期間内に被疑者を釈放しないのであれば、必ず起訴しなければなりません。被疑者は起訴されると被告人と呼ばれ、刑事裁判の当事者になります。起訴には略式起訴と正式起訴の2つがあります。
略式起訴されると略式裁判という簡易な裁判で審理され、裁判官から罰金または科料の支払を命じられます。金額などが記載された略式命令という書面が被告人に交付され、その時点で釈放されます。
⇒略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説
正式起訴されると裁判所から起訴状が本人のもとに郵送されます。その後、公開の法廷で審理されます。起訴されてから約1か月半後に初公判が実施されます。
罪を認める自白事件であれば初公判1回で審理が終了し、その1、2週間後に判決が言い渡されることが多いです。無罪を求める否認事件であれば、初公判以降も審理が継続します。短くても6か月程度はかかるでしょう。1年以上裁判が継続することもあります。
逮捕後の流れは?起訴後勾留されたらどうなる?
起訴後勾留の要件は、起訴前の勾留と同じですが、勾留までの流れが異なります。
起訴前の勾留は、検察官の勾留請求が出発点となりますが、起訴後勾留については勾留請求という制度がありません。
起訴された時点で裁判官が職権で勾留の要件にあたるか否かを検討し、あたると判断すれば起訴後勾留を決定します。実際は、勾留された被疑者が起訴されれば、ほぼ100%起訴後勾留されます。
起訴後の勾留は原則2か月ですが、特に継続の必要がある場合は、1か月単位で更新することができます。ただし、一定の犯罪を除き更新は1回に限られます。
【刑事訴訟法第60条2項】 勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。 |
| 逮捕の要件 |
89条1号 | 死刑、無期または短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯したとき |
89条3号 | 常習として長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯したとき |
89条4号 | 証拠隠滅のおそれがあるとき |
89条6号 | 氏名不詳または住居不定 |
逮捕後の流れは?不起訴になればどうなる?
不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけないこととする処分です。不起訴になればその時点で刑事手続は終了します。起訴するか不起訴にするかを決めるのは検察官です。
身柄事件と在宅事件をあわせた全ての刑事事件の不起訴率は約60%です。
根拠:2022年検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
逮捕されたか否かと不起訴になるか否かは関係がありません。逮捕されなくても起訴されるケースは多々ありますし(在宅起訴)、逆に逮捕されて不起訴になるケースも多々あります。
逮捕は捜査の初期に行われるのに対して、起訴・不起訴は捜査の一番最後になされる処分であり、それぞれの場面で考慮される事情は異なるからです。
身柄事件は在宅事件に比べて重い犯罪が多くなるため、身柄事件だけに限ると、不起訴率は60%より下がるでしょう。
逮捕後に不起訴になるための方法は?
1.自白事件
罪を認める自白事件のケースでは、性犯罪など被害者がいる場合、被害者と示談をすることが重要です。示談という形で被害者に許してもらえれば、不起訴の可能性が高くなります。
捜査機関は被害者の氏名や電話番号を被疑者には教えてくれませんので、示談を希望する場合は弁護士を通じて被害者と交渉することになります。
薬物事件など被害者がいない事件については、専門のクリニックに通院する等の再犯防止プランを実行してもらいます。
2.否認事件
否認事件では、取調べで「私がやりました」といった自白調書がとられると、嫌疑不十分での不起訴や無罪の獲得が困難になります。
自白調書をとられないように、弁護士が被疑者と接見し、黙秘権などの重要な権利について説明し、取調べにどう対応すればよいのかをアドバイスします。
逮捕後の釈放のタイミングは?勾留されずに釈放されるケース
勾留されずに釈放されるタイミングは以下の3つです。
1.検察官に送致される前に釈放されるケース
警察(司法警察員)が逮捕した被疑者の弁解を聞いた上で留置する必要がないと判断した場合は、検察官に送致することなく釈放します。釈放のタイミングは逮捕当日です。釈放にあたって、家族や上司に身元引受人として迎えに来てもらいます。
⇒刑事事件の身元引受人とは?必要なケースやデメリット、弁護士費用
痴漢や万引き等で私人逮捕された被疑者を受けとった場合、逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ、検察官に送致せずに釈放します。
⇒現行犯逮捕とは?通常逮捕との違いや現行犯逮捕された時の対処法
2.勾留請求されずに釈放されるケース
逮捕され検察官に送致されても、検察官が勾留請求をしなければ釈放されます。釈放のタイミングは、午前8時30分より前に逮捕された場合は逮捕の翌日、午前8時30分以後に逮捕された場合は逮捕の翌々日になることが多いです。
3.勾留請求が却下されて釈放されるケース
検察官が勾留請求をすると被疑者は裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官が勾留請求を却下した場合は、勾留されずに釈放されます。
釈放のタイミングは、午前8時30分より前に逮捕された場合は逮捕の翌日、午前8時30分以後に逮捕された場合は逮捕の翌々日になることが多いです。ただし、東京都内の警察に逮捕された場合は、上記よりも1日遅くなります。
【勾留請求が却下されて釈放されるタイミング】
| 通常のケース | 東京都内 |
2月1日午後1時に逮捕 | 2月3日に釈放 | 2月日に釈放 |
逮捕後の釈放のタイミングは?勾留後に釈放されるケース
勾留された後に釈放されるタイミングは以下の3つです。
1.裁判所の判断で釈放されるケース
弁護士が裁判所に準抗告を申し立てたり、勾留取消請求をすることによって、釈放されることがあります。準抗告や勾留取消請求が認められると、検察官の勾留請求を許可した当初の裁判が取り消され、被疑者が釈放されます。
2.示談成立により釈放されるケース
被害者との間で示談が成立すれば速やかに釈放されることが多いです。釈放のタイミングは弁護士が検察官に示談書を提出した当日になることが多いです。
午後に提出した場合は翌営業日にずれこむこともあります。この場合、不起訴処分となり釈放されるケースと処分保留で釈放されるケースがあります。
処分保留釈放とは被疑者を起訴するか不起訴にするか決めないまま釈放する手続です。処分保留で釈放された場合、しばらくしてから不起訴になることが多いです。
3.証拠不十分で釈放されるケース
被疑者が容疑を否認している場合、検察官が有罪に持ち込めるだけの証拠があると判断した場合は、起訴します。
逆に起訴しても有罪に持ち込むだけの証拠がないと判断した場合は、嫌疑不十分で不起訴にします。不起訴にして釈放する場合と、処分保留で釈放してから嫌疑不十分で不起訴にするケースがあります。
逮捕後の釈放のタイミングは?起訴後に保釈されるケース
起訴後勾留されている場合、保釈請求をすることができます。
保釈とは勾留の執行を判決まで停止し、被告人の身柄を解く制度です。保釈請求が許可されて裁判所に保釈金を納付すると釈放されます。
保釈請求は起訴後に限って認められます。起訴前は認められませんのでご注意ください。
逮捕後の流れ(イメージ)
東京都内の警察に逮捕された場合の流れは以下の通りです。
| 手続 | 釈放のタイミング |
6月1日 | 被疑者を逮捕 |
|
6月2日 | 検察庁に連行⇒検察官の取調べ |
|
検察官が勾留請求 | 勾留請求しなければ釈放 | |
6月3日 | 裁判所に連行⇒裁判官の勾留質問 |
|
裁判官が勾留請求を許可 | 勾留請求を却下すれば釈放 | |
↓↓ | 警察署で取り調べ | ①示談が成立すれば釈放される可能性が高くなる。
②弁護士が準抗告等を申し立てることにより釈放されることもある。 |
6月10日 | 検察官の中間調べ | |
6月11日 | 検察官が勾留延長請求 | |
裁判官が延長請求を許可 | ||
6月21日 | 勾留満期(この日までに起訴 or 釈放) |
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