受け子とは?特殊詐欺の受け子の弁護方法について解説

このページは特殊詐欺(オレオレ詐欺)の刑事弁護を数多く手がけてきたウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

受け子とは?

特殊詐欺の受け子とは、被害者と接触して現金やキャッシュカードをだまし取ったりすり取ったりする者です。

 

 

被害者は、受け子と接触する前に、「かけ子」と呼ばれるだまし役によってだまされます。かけ子は被害者の息子等のふりをして、電話で言葉巧みに被害者をだまし、受け子と接触させるのです。

 

 

かけ子は被害者に対して次のように言ってきます。

 

 

「(息子のふりをして)トラブルに巻き込まれて100万円が必要になった。僕は用事があるので部下がお金をとりに行くから渡してあげて。」

 

「(銀行職員のふりをして)うちの職員がお宅を訪問して古くなったキャッシュカードを回収してします。」

 

 

受け子が被害者に接触する日時や場所、接触した際の話し方は指示役から細かく指示されます。受け子が被害者と接触中は常時、指示役と電話をつなぎっぱなしにするよう指示されます。

 

 

受け子は被害者の面前で指示役に言われた通りの人物を演じ、被害者から現金やキャッシュカードをだまし取ったり、すり替えます。

 

 

受け子の3つのタイプ

受け子には現金受け取り型とキャッシュカード受け取り型、キャッシュカードすり替え型の3つのタイプがあります。

 

 

以前は現金受け取り型が一般的でしたが、近年は高齢者が銀行で多額の現金を引き出すことが難しくなったため、キャッシュカード受け取り型やすり替え型がメインになっています。それぞれのタイプを個別にみていきます。

 

 

1.現金受け取り型の受け子

現金受け取り型の受け子は、被害者の家に行き、被害者から紙袋に入った現金を受け取ります。その後、指示役に指示されたコインロッカーに紙袋を入れたり、指示された場所で回収役と接触し紙袋を渡します。

 

 

2.キャッシュカード受け取り型の受け子

キャッシュカード受け取り型の受け子は、被害者の家に行き、「古くなったキャッシュカードを回収します。」等といって被害者からキャッシュカードをだまし取ります。

 

 

その後、指示役に指示されたATMに行き、だまし取ったカードを挿入して現金を引き出します(出し子)。引き出したお金の一部を報酬として受け取り、残りは指示役の指示でロッカーに入れたり、回収役に渡します。

 

 

3.キャッシュカードすり替え型の受け子

キャッシュカードすり替え型の受け子は、被害者の家に行き、被害者の隙をついて、カードをすり替えます。手口はこうです。

 

 

まず受け子が被害者に「これから別の者が古くなったキャッシュカードを回収しに来ますのでこちらの封筒に入れておいてください。封を閉めますので封印を押してください。」と言います。

 

 

被害者が印鑑を取りに行っている間に封筒に入れたキャッシュカードをすり取り、全く関係のないカードを封筒に入れます。何も知らない被害者に印鑑を押させ立ち去るのです。

 

 

キャッシュカードをすり替えた方がだまし取るよりも発覚が遅くなりやすいため、その間に一気にATMから被害者のお金を引き出します。

 

 

受け子は何罪になる?罰則は?

1.現金受け取り型の受け子

現金受け取り型の受け子には詐欺罪が成立します。

 

 

【罰則】

詐欺罪の罰則は10年以下の拘禁刑です。

 

 

2.キャッシュカード受け取り型の受け子

キャッシュカード受け取り型の受け子が被害者からキャッシュカードをだましとった時点で詐欺罪が成立します。

 

 

その後、だましとったキャッシュカードをATMに挿入して不正に現金を引き出した時点で窃盗罪が成立します。不正に現金を引き出すことによって、銀行が管理しているお金を盗んだと評価できるからです。

 

 

詐欺罪は人をだます犯罪ですので、ATMから現金を引き出しても詐欺罪にはなりません。

 

 

【罰則】

詐欺罪の罰則は10年以下の拘禁刑です。窃盗罪の罰則は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑です。詐欺と窃盗の2件の犯罪は併合罪となり、最高刑は15年の拘禁刑となります。

 

 

3.キャッシュカードすり替え型の受け子

キャッシュカードすり替え型の受け子がキャッシュカードをすり取った時点で窃盗罪が成立します。すり取ったキャッシュカードをATMに挿入した時点で銀行職員を被害者とする窃盗罪が成立します。

 

 

【罰則】

2つの窃盗は併合罪となり、最高刑は15年の拘禁刑となります。

 

 

受け子と逮捕

特殊詐欺の受け子は、現行犯で逮捕されることが一般的ですが、後日逮捕されることもあります。それぞれのケースについてみていきましょう。

 

 

1.現行犯逮捕されるケース

被害者がかけ子と話している最中にだまされていることに気づいた場合、受け子はだまされたふり作戦によって現行犯逮捕される可能性が高いです。だまされたふり作戦の流れは次の通りです。

 

 

①被害者がかけ子とやりとりしているうちにだまされていることに気づく

②被害者が警察に通報する

③捜査員が被害者の自宅や周辺で待機する

④何も知らずにやって来た受け子が被害者から物を受けとる

⑤待機していた捜査員が被害者を取り押さえて現行犯逮捕する

特殊詐欺のだまされたふり作戦とは?無罪になる?判例も解説!

 

 

だまされたふり作戦によって現行犯逮捕される場合、被害者はだまされていることに気づいており、実際にはだまされていないため、詐欺未遂罪が成立します。

 

 

2.後日逮捕されるケース

キャッシュカード受け取り型の受け子やすり替え型の受け子は防犯カメラによって特定されやすく、後日逮捕されることが少なくありません。後日逮捕の流れは次の通りです。

 

 

①受け子にキャッシュカードをとられた後に被害者がだまされたことに気づく

②警察に通報する

③警察が銀行に被害者のカードの使用状況について照会する

④犯人が利用したATMを特定し防犯カメラを解析する

⑤リレー形式で防犯カメラを順次解析することにより犯人の居場所を特定する

⑥逮捕状を請求する

⑦逮捕する

 

 

受け子と再逮捕

1.再逮捕とは

再逮捕とは、一度逮捕した被疑者を別の事件で逮捕することです。同一の事件で複数回逮捕することはできませんが、別の事件であれば、逮捕の要件を満たす限り逮捕することができます。

再逮捕とは?

 

 

特殊詐欺の受け子は、逮捕されるまでの間に、複数の被害者の自宅に行って現金やカードを受け取っていることが多いため、再逮捕されることがあります。被害者が異なると別の事件として立件され、事件ごとに(再)逮捕の対象になります。

 

 

被害者Aに対する詐欺事件→5月1日に逮捕

被害者Bに対する詐欺事件→6月1日に再逮捕

被害者Cに対する詐欺事件→7月1日に再逮捕

 

 

2.現金受け取り型の受け子と再逮捕

現金受け取り型の受け子の場合、余罪があったとしても、取調べで黙秘すれば再逮捕を回避できる余地があります。

否認事件の取調べ-黙秘によって不利な調書をとらせない!

黙秘とは?黙秘の意味や使い方、デメリットについて解説

 

 

防犯カメラ等で犯人を特定できなければ、「私がやりました」という自白がない限り有罪を立証することが難しくなるからです。

 

 

3.カード受け取り型・カードすり替え型の受け子と再逮捕

カード受け取り型やすり替え型の受け子は黙秘しても再逮捕される可能性が高いです。これらの受け子は被害者から受け取った(すり取った)カードを使ってATMから現金を引き出しています。

 

 

受け子が現金を引き出したATMは被害者のカード情報から特定することができます。ATMの近くに設置された防犯カメラに引き出している受け子の姿が写っているため、犯人として特定されやすいです。そのため、再逮捕される可能性が高くなります。

 

 

受け子に余罪があっても再逮捕されないケース

受け子が否認や黙秘をせず余罪も含めて全面的に自白しているケースでは、1,2回逮捕された後は再逮捕ではなく「追送致」として処理されることが多いです。追送致とは被疑者を逮捕せずに、捜査書類だけ警察から検察庁に送ることです。

追送致とは?再逮捕と追送致をわける4つのポイント等を解説

 

 

追送致されると、再逮捕された場合に比べ、保釈請求のタイミングが早くなります。保釈請求は、起訴されなければすることができませんが、追送致された事件は、そもそも勾留されていないため、保釈請求の対象になりません。

 

 

そのため、追送致される前に逮捕・勾留された事件が起訴された時点で保釈請求することが可能になるのです。余罪も含めて自白しているケースでは、事前に弁護士が検察官に追送致で処理するよう求めます。

 

 

【追送致なし】

事件①…5月1日に逮捕→5月23日に起訴(勾留あり)

事件②…6月1日に再逮捕→6月23日に追起訴(勾留あり)

事件③…7月1日に再逮捕→7月23日に追起訴(勾留あり)

⇒保釈請求は7月23日から可能

 

 

【追送致あり】

事件①…5月1日に逮捕→5月23日に起訴(勾留あり)

事件②…6月1日に追送致→6月23日に追起訴(勾留なし

事件③…7月1日に追送致→7月23日に追起訴(勾留なし

⇒保釈請求は5月23日から可能

 

 

【保釈のページ】

保釈を弁護士に依頼しよう!保釈の流れや保釈金、申請が通る確率は?

 

 

受け子と勾留

逮捕の次の段階の身柄拘束のことを勾留といいます。

 

 

逮捕された被疑者を受け取った検察官は、「逃亡したり証拠を隠滅するおそれがある。」と判断した場合は、裁判官に対して勾留を請求します。裁判官も検察官と同様に考えれば、勾留請求を許可し被疑者を勾留します。

 

 

特殊詐欺は組織的に行われるため証拠隠滅(共犯者との口裏合わせ等)のおそれがあるとみなされやすいです。また、基本的には実刑になるため逃亡のおそれがあるとみなされやすいです。

 

 

そのため、逮捕されたら勾留される可能性が高いです。起訴前の勾留は原則10日、延長されれば最長20日になります。特殊詐欺の受け子が勾留された場合、20日(近く)にわたって勾留され、満期近くで起訴されることが多いです。

 

 

再逮捕された後も同様の流れになります。

 

 

受け子と起訴

1.起訴が原則

特殊詐欺の受け子が逮捕されれば起訴される可能性が高いです。特殊詐欺は社会問題になっており、厳しい処分で臨むという捜査方針が徹底されているためです。

 

 

そのため、他の犯罪と異なり、被害者と示談したからといって、起訴猶予で不起訴になる可能性は低いです。

不起訴処分とは?無罪との違いを弁護士がわかりやすく解説

 

 

余罪で再逮捕された場合、追起訴される可能性が高いです。追起訴とは最初に起訴された事件とは別の事件で後日起訴することです。

追起訴とは?裁判の流れや執行猶予の可能性について解説

 

 

追起訴された事件は最初に起訴された事件と併合され、同じ裁判官によって同一の裁判手続で審理されます(弁論の併合)。判決もまとめて言い渡されます。

公判の流れ(追起訴あり)

 

 

2.現金受け取り型の受け子と起訴

現行犯逮捕されれば、否認してもほぼ100%起訴されます。後日逮捕や再逮捕された事件については、受け子が黙秘することにより、嫌疑不十分で不起訴になる余地があります。

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3.カード受け取り型・すり替え型の受け子と起訴

受け子が被害者からキャッシュカードをだまし取ったりすり取るケースでは、そのカードを使ってATMから現金を引き出しています。その場合、防犯カメラなどの客観的証拠だけで有罪を立証できるため、受け子が完全黙秘しても起訴される可能性が高いです。

 

 

受け子は執行猶予それとも実刑?

詐欺未遂で現行犯逮捕されたケースでは、初犯であれば示談が成立しなくても、執行猶予を獲得できる余地は十分にあります。示談が成立すれば執行猶予を獲得できる可能性が高いです。

 

 

複数の事件で起訴されたケースでは、被害者が3名前後、被害額の合計が300万円前後であれば、全員と示談して許してもらえれば、執行猶予を獲得できる余地があります。

 

 

被害者の数や被害金額がこのレベルを超えてくると、実刑判決の可能性が高くなりますが、弁護活動によっては執行猶予を獲得できることもあります。

オレオレ詐欺の受け子が執行猶予を獲得するための11のポイント

 

 

ウェルネスの弁護士は被害者5名、被害金額が1000万円近くの事件で執行猶予を獲得したこともあります。

 

 

受け子のタイプに応じた弁護方法

1.現金受け取り型の受け子

現金受け取り型のケースでは、客観的な証拠が残らないことが多いため、本人が黙秘することにより余罪での再逮捕や追起訴を回避できる余地があります。

 

 

ただ、黙秘すれば常に再逮捕や追起訴を回避できるというわけではありませんので、実際に黙秘するかどうかは弁護士と相談して決めるとよいでしょう。

 

 

2.キャッシュカード受け取り型・すり替え型の受け子

ATMの引き出し履歴や防犯カメラがあるため黙秘しても再逮捕・追起訴を回避できない可能性が高いです。

 

 

そのため、黙秘を貫いて何度も再逮捕されるよりは、当初から追送致狙いで、余罪も含めて素直に供述し、早期の保釈を目指すことが考えられます。

オレオレ詐欺の3つの弁護方針について弁護士が解説

 

 

ウェルネスの弁護士は3つのタイプの受け子全てについて執行猶予を獲得した実績があります。家族が受け子で逮捕されお困りの方はウェルネス(03-5577-3613)へおご相談ください。

 

 

 

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