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【保釈】検察官の準抗告・抗告とは?保釈が許可されても釈放されない?
保釈が許可されると、裁判所に保釈金を納付した後、1~2時間で被告人は釈放されます。
弁護士から保釈許可の一報を受けて、家族が警察署や拘置所に迎えに行っているかもしれません。
しかし、保釈金を納付してもすぐに釈放されないケースがあります。検察官が保釈許可の決定に対して不服を申し立てた場合です。検察官の不服申し立てには準抗告と抗告の2つがあります。
このページでは刑事事件の経験豊富な弁護士 楠 洋一郎が検察官による準抗告と抗告についてわかりやすく解説しました。ぜひ参考にしてみてください!
目次
【保釈】検察官の準抗告・抗告とは?
1.準抗告と抗告の違い
保釈許可に対する検察官の不服申し立てには準抗告と抗告の2種類があります。
準抗告は「裁判官」の処分に対する不服申し立て、抗告は「裁判所」の処分に対する不服申し立てです。⇒準抗告とは?抗告との違いや種類・流れについて解説
2.初公判前は裁判官、初公判後は裁判所が判断する
弁護士が保釈請求をすると裁判官または裁判所が保釈の当否を判断します。裁判官と裁判所のどちらが判断するかは、保釈請求のタイミングによって異なります。
弁護士が初公判の前に保釈請求をした場合は、公判を担当しない裁判官が判断します。これに対して、初公判後に保釈請求をした場合は公判を担当する裁判所が判断します。
初公判の前に公判を担当する裁判所が保釈について審理すると、白紙の状態で初公判に臨めなくなるため、初公判前に限り、公判を担当しない裁判官が審理することになっています。
3.初公判前は準抗告、初公判後は抗告
初公判前の保釈請求が許可されたときは、検察官は裁判官の保釈許可決定に対して準抗告を申し立てます。
これに対して、初公判後の保釈請求が許可されたときは、検察官は裁判所の保釈許可決定に対して抗告を申し立てることになります。
保釈請求は1人の裁判官が判断しますが、準抗告や抗告は、3名の裁判官による合議体で判断されます。準抗告は地方裁判所、抗告は高等裁判所が判断します。以上をまとめると以下の表のようになります。
保釈請求のタイミング | 判断者 | 検察官の不服申立て | 検察官の不服を判断する裁判所 |
初公判前 | 公判審理を担当しない裁判官 | 準抗告 | 地方裁判所 |
初公判後 | 公判審理を担当する裁判官 | 抗告 | 高等裁判所 |
【保釈】検察官の準抗告・抗告と保釈の執行停止
1.準抗告・抗告の結果は?
検察官が準抗告や抗告を申し立てると、裁判官3名の合議体が、その申立てに理由があるか否かを判断します。
理由がないと判断すれば、準抗告は棄却され保釈許可決定が維持されます。そのため、保釈金を納付すれば、被告人は釈放されます。
準抗告や抗告に理由があると判断されれば、当初の保釈許可決定は取り消されます。そのため、被告人は釈放されないということになります。既に保釈金を納付している場合は全額返還されます。
2.結果が出るまでの間は釈放される?
結論から言うと釈放されません。検察官は、準抗告や抗告を申し立てるのと同時に、裁判所に「保釈許可決定の裁判の執行停止」を求めます(裁判の執行停止申立書)。
裁判所は、この求めに応じて、「(準)抗告に対する裁判があるまで保釈許可の裁判の執行を停止する」という決定を下します(執行停止決定)。
執行が停止されると、保釈金を納付しても被告人が釈放されることはありません。検察官の準抗告や抗告が棄却されるのを待つことになります。
【保釈】検察官の準抗告・抗告の流れ
典型的な準抗告・抗告の流れは次の通りです。
7月1日 | 弁護士が保釈請求 |
7月3日午後1時 | 弁護士が裁判官と面接 |
7月3日午後3時 | 保釈許可決定が出る |
7月3日午後3時30分 | 裁判所に保釈金を納付 |
7月3日午後4時 | 検察官による(準)抗告+執行停止の申立て→保釈の執行が停止される |
7月5日午後7時 | (準)抗告が棄却される |
7月5日午後8時 | 被告人が釈放される |
【保釈】検察官の準抗告・抗告の結果はいつ出る?
(準)抗告された場合、当日の夕方以降に判断が出ることが多いです。裁判所には(準)抗告だけを審理する部署はありません。(準)抗告の審理は、裁判所の刑事部が持ち回りの当番制で担当します。
これらの部は通常の公判業務に加えて、当番で(準)抗告の審理をしているため、決定が出るのは通常業務を終えた後、すなわち夕方や夜になることが多いです。
また、日によっては、担当部に多数の(準)抗告事件が集中し、その日のうちに処理しきれないこともあります。
そうはいっても、申し立てた日の翌営業日中には判断が出ます。申立てが金曜日や連休前にされた場合は、裁判所も頑張ってその日のうちに決定を出すことが多いです。
【保釈】検察官が準抗告・抗告を申し立てるケース
保釈が許可された場合、全てのケースで、検察官が準抗告や抗告を申し立てるわけではありません。むしろ、多くの事件では、検察官は不服を申し立てず、弁護士が保釈金を納付すれば、被告人は速やかに釈放されます。
実際に検察官が不服申立てをするケースは2割あるかないかといったところです。ただ、次の3つの事情が全てあてはまる場合は、検察官が(準)抗告を申し立てる可能性が高くなります。
①組織的な犯罪(振り込め詐欺など)
②被告人が捜査段階で否認・黙秘していた
③検察側の証拠調べが終了していない
【(準)抗告の豆知識】 実は検察官が(準)抗告をするかどうかは事前に決まっています。検察官は、裁判所に提出する意見書の右上に小さな紙をクリップでとめます。その紙には、「不相当(釈放可)」という文字と「不相当」という文字が記載されており、どちらかに〇をつけて押印します。
「不相当」に〇がされていれば、保釈請求が許可された場合は準抗告や抗告を申し立てます。この小さな紙は、意見書を裁判所に出す直前に、検察庁の令状部でとり外されてそこで保管されます。裁判所から保釈請求の第一報が入るのが検察庁の令状部だからです。 |
【保釈】準抗告・抗告が認められる可能性
保釈許可決定に対して、検察官が(準)抗告をした場合、それが認められる可能性はそれほど高くはありません。
一度は保釈が許可されている以上、保釈を認めるべき一応の事情はあるといえるでしょうし、(準)抗告を担当する裁判所も時間がないなかで、踏み込んだ判断をするのは容易ではないからです。
保釈を許可した裁判官が、(準)抗告の担当裁判所に対して、検察官の申立てに理由がない旨の意見書を提出することもあります。正確な統計があるわけではありませんが、ウェルネスの弁護士の経験上、検察官の不服が認められる可能性は2割程度です。
【保釈】準抗告・抗告に対する弁護活動
検察官が(準)抗告をした場合、弁護士が意見書を作成して裁判所に提出します。担当裁判官と面接し、検察官の申立てに理由がないことを説明することもあります。
担当裁判官は、他にも抗告事件を抱えていることが多く、面接に消極的な裁判官もいますが、そのような場合であっても、電話で話を聞いてもらえることが多いです。
【保釈】検察官の準抗告・抗告と保釈金を納めるタイミング
検察官が(準)抗告を申し立てた場合、結果が出るまで保釈金は納付しない方がよいのでしょうか?
結論としては、結果が出る前に納付した方がよいです。
【理由】
(準)抗告についての判断が出るのは当日の夜になることが多いです。夜に判断が出た場合、銀行も裁判所も営業していないため、保釈金を電子納付・銀行振込しても釈放されるのは翌営業日になります。
あらかじめ保釈金を納付しておけば、(準)抗告が棄却されれば、何もしなくても1、2時間で釈放されます。夜に棄却されたとしてもその日のうちに釈放されます。
もし、(準)抗告が認められ、保釈許可決定が取り消されても、納付した保釈金は全額返還されますので、デメリットはありません。
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