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特殊詐欺で家族が逮捕された!知っておきたいことを弁護士が全解説

特殊詐欺で家族が逮捕

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

特殊詐欺とは?弁護士が解説

特殊詐欺とは?弁護士が解説

 

特殊詐欺とは、主として高齢者をターゲットとして、詐欺グループのメンバーが役割分担をしてお金等をだましとる犯罪です。

 

 

特殊詐欺には、被害者をだまして銀行口座にお金を振り込ませる振り込め詐欺や、親族のふりをして現金やキャッシュカードをだましとるオレオレ詐欺があります。

特殊詐欺の種類は?

 

 

特殊詐欺のかけ子・受け子・出し子とは?

特殊詐欺のかけ子・受け子・出し子

 

特殊詐欺は詐欺グループによって組織的に行われます。詐欺の実働部隊は、主としてかけ子・受け子・出し子の3つに分けられます。

 

 

1.特殊詐欺のかけ子とは?

かけ子とはだまし役です。被害者に電話をかけて「還付金が受けとれます」等と金銭面でメリットがある話や、息子のふりをして「トラブルに巻き込まれてお金が必要になった」等と不安をあおる話をして高齢者をだまします。 

 

 

2.特殊詐欺の受け子とは?

受け子とは、だまされている被害者の自宅に行って、現金やキャッシュカードを受けとる者です。若者がてっとり早くお金を得ようとして、SNSで闇バイトに応募し受け子をするケースが増えています。

 

 

3.特殊詐欺の出し子とは?

出し子とは、特殊詐欺の被害者がお金を振り込んだ口座から現金を引き出したり、受け子が被害者からだましとったキャッシュカードを使ってお金を引き出す者です。

 

オレオレ詐欺の被害者からキャッシュカードを受けとりATMで引き出す場合は、一人で受け子と出し子をしていることになります。

 

 

かけ子と受け子(出し子)は、別々の詐欺グループに属しており、お互いに面識がありません。各グループ間の連絡・調整は指示役が行います。

 

 

他に受け子や出し子からお金を受け取り指定された場所まで運ぶ「運搬役」、活動拠点を準備する「ハコ屋」、SNSで受け子や出し子をリクルートする「リクルーター」、名簿を用意する「名簿屋」、電話機などを手配する「道具屋」がいます。

特殊詐欺のリクルーター

 

 

特殊詐欺と共謀共同正犯

特殊詐欺と共謀共同正犯

 

特殊詐欺では共謀共同正犯(きょうぼうきょうどうせいはん)という概念が重要になります。

 

 

自分が犯罪行為の全部または一部を実行していなくても、共犯者とチームプレーで犯罪を行っている場合、共犯者との「共謀」が認められ、自分が実行していない部分も含めて犯罪が成立します。これを共謀共同正犯と言います。

 

 

特殊詐欺グループでは、指示役・かけ子・受け子・出し子・リクルーター等がそれぞれの役割の範囲で動いています。

 

 

各メンバーは詐欺の一部しか行っていませんが、全員がチームプレーでお互いに利用しあって犯罪を行っているので、たとえ一部しか関与していなくても、一連の行為について詐欺罪の共謀共同正犯になります。

 

 

特殊詐欺は何罪になる?罰則は?

特殊詐欺は何罪になる?罰則は?

 

特殊詐欺は被害者からお金をだまし取っているので詐欺罪(刑法246条1項)になります。詐欺罪の罰則は10年以下の懲役です。罰金刑はありませんので、起訴されれば公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。

 

 

【刑法】

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

 

被害者が詐欺であることに気づいた場合は、通報を受けた捜査員が被害者の自宅や周辺に緊急配備され、バレていることを知らずにやってきた受け子を逮捕することがあります(だまされたふり作戦)。

 

 

だまされたふり作戦で逮捕された場合、被害者は実際にだまされたわけではないため、詐欺未遂罪が成立します。未遂の場合は既遂に比べて刑罰が軽くなります。

 

 

【刑法】

第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

 

 

特殊詐欺が窃盗罪になるケース

特殊詐欺が窃盗罪になるケース

 

特殊詐欺をすると詐欺罪ではなく窃盗罪に該当することもあります。窃盗罪の罰則は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 

 

詐欺罪と異なり罰金刑もありますが、特殊詐欺で罰金刑になることはありません。そのため、起訴されれば公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されることになります。

 

 

【刑法】

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

 

特殊詐欺が窃盗罪に該当するケースは以下となります。

 

 

1.【受け子】キャッシュカードをすりとったケース

受け子が目の前にいる被害者にキャッシュカードを封筒に入れさせ、「封印が必要」等と言って被害者に印鑑を取りに行かせている間に、別の封筒とすり替えてキャッシュカードをすりとるケースがあります(キャッシュカード詐欺盗)。

 

 

キャッシュカード詐欺盗のケースでは、被害者が気がつかないうちにすり取っているので、窃盗罪が成立します。

 

 

2.【出し子】キャッシュカードで現金を引き出したケース

出し子が被害者からとったキャッシュカードをATMに挿入して、被害者の口座から現金を引き出した場合は、現金に対する銀行の占有を侵害したとして、窃盗罪が成立します。

 

 

窃盗罪の被害者は銀行になりますが、実質的な被害者は特殊詐欺の被害者ですので、被害弁償も特殊詐欺の被害者に対してする必要があります。

 

 

3.【かけ子】受け子・出し子との共謀共同正犯

受け子・出し子に窃盗罪が成立する場合、かけ子は受け子・出し子と相互に利用しあって自己の犯罪を実現していますので、かけ子にも窃盗罪の共謀共同正犯が成立します。

 

 

特殊詐欺で逮捕された後の流れは?

特殊詐欺で逮捕された後の流れ

 

特殊詐欺で逮捕されると2,3日で釈放されることはありません。

 

 

検察官の勾留請求⇒裁判官の勾留質問を経て勾留されることになります。勾留されると原則10日、延長されると最長20日わたり拘束されます。特殊詐欺で勾留されると延長されることが多いです。

 

 

検察官は勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。

逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説

 

 

起訴されると勾留は継続しますが、保釈を請求することができます。保釈請求が許可され保釈金を納付すれば、釈放されます。

保釈を弁護士に相談-保釈金・申請が通る確率・保釈の流れ

 

 

特殊詐欺で逮捕されたら接見禁止になる?

特殊詐欺と接見禁止

 

特殊詐欺には複数の共犯者が関与しています。そのため、特殊詐欺で逮捕・勾留されると、共犯者との口裏合わせ等を防ぐため、裁判官によって接見禁止処分に付されます。

 

 

接見禁止が付くと弁護士以外の人は接見できません。家族であっても接見できないので、被疑者にとっては辛い日々が続きます。

接見禁止とは?接見禁止の理由や期間、解除の方法について解説

 

 

弁護士が裁判所に接見禁止の一部解除を申し立てることにより、家族や恋人が接見できるようになることもあります。

接見禁止一部解除で家族や恋人に会う方法

 

 

特殊詐欺で不起訴は狙える?

特殊詐欺で不起訴は狙える?

1.起訴猶予での不起訴は難しい

特殊詐欺は社会問題になっており、検察は処罰の必要性が高いと考えています。そのため、特殊詐欺で逮捕されると原則として起訴されます。他の犯罪と異なり、被害者と示談したからといって、起訴猶予で不起訴になるわけではありません。

 

 

起訴猶予とは、十分な証拠があり起訴して有罪判決に持ち込めるが、被害者の許しを得ていること等の事情をふまえ、検察官が特別に不起訴にする処分です。

不起訴処分について弁護士がわかりやすく解説

 

 

2.嫌疑不十分での不起訴は狙える

起訴猶予での不起訴は難しいですが、十分な証拠がなければ嫌疑不十分での不起訴は狙えます。嫌疑不十分とは「公判を維持するだけの証拠がないため検察官が不起訴とする処分」です。

不起訴処分について弁護士がわかりやすく解説

 

 

証拠がなければ、起訴しても有罪判決を得ることが難しいため、嫌疑不十分で不起訴にせざるを得ません。

 

 

「証拠」には被疑者自身の供述も含まれます。そのため、黙秘権を行使することにより、不利な供述調書をとらせないようにすることが重要です。

黙秘とは?黙秘の意味や使い方、デメリットについて解説

否認事件の刑事弁護

 

 

黙秘権は憲法で認められた権利ですから、行使をためらう必要はありません。もっとも、捜査段階で黙秘すると、接見禁止の解除や保釈が認められにくくなるといったデメリットもあります。そのため、黙秘するか否かは弁護士に相談して決めた方がよいでしょう。

 

 

特殊詐欺で執行猶予はつく?

特殊詐欺で執行猶予はつく?

 

1.執行猶予とは

執行猶予とは有罪判決のひとつで、一定期間に罪を犯して有罪とならない限り、刑務所で服役しなくてもよい処分です。

 

 

例えば、懲役1年・執行猶予3年という判決の場合、3年の間に罪を犯して有罪になることがなければ、懲役に服する必要がなくなります。

 

 

2.特殊詐欺と執行猶予

特殊詐欺で起訴された場合、執行猶予はつくでしょうか?

 

 

特殊詐欺は社会問題になっており、「特殊詐欺をしても割に合わない」ということを知らしめるため、検察官は厳しい処罰を求める傾向があります。そのため、特殊詐欺で起訴されると実刑になるケースが多いです。

 

 

末端の受け子・出し子よりかけ子や指示役の方が、より重要な役割を果たしており、刑が重くなります。また、被害者や被害金額が増えるほど刑が重くなります。受け子が詐欺未遂で捕まり余罪がない場合は、執行猶予を獲得できる可能性はかなりあります。

 

 

それ以外の場合は、被害者が5名以内・被害金額の合計が1000万円未満の場合は、被害者全員と示談が成立すれば、執行猶予になる余地はあります。

オレオレ詐欺の受け子が執行猶予を獲得するための11のポイント

 

特殊詐欺で保釈は可能?保釈金は?

特殊詐欺で保釈は可能?保釈金は?

 

1.保釈とは?

起訴されたら保釈請求をすることができます。保釈請求が許可され指定された保釈金を裁判所に納めれば、判決までの間、釈放されます。これが保釈です。

 

 

特殊詐欺で逮捕されると、身柄拘束が長期化するケースが多いため、保釈を希望する方が多いです。

保釈を弁護士に相談-保釈金・申請が通る確率・保釈の流れ

 

 

2.特殊詐欺で保釈は可能?

家族のサポートがあれば特殊詐欺でもほとんどのケースで保釈が可能です。余罪も含め全面的に容疑を認めれば、再逮捕されずに追送致という形で進められることが多いです。その場合は早めに保釈が許可されやすくなります。

 

 

取調べで黙秘したり否認している場合は、裁判がかなり進行するまで保釈が許可されないことが多いです。

 

 

「保釈が遅くなる」という点はデメリットといえますが、黙秘や否認することにより不起訴を獲得できることもあるため、どのような方針で対応するかについて弁護士とよく相談して決めてください。

 

 

3.特殊詐欺の保釈金は?

特殊詐欺の保釈金は起訴された事件が1件だけの場合は200万円前後になります。1件追起訴された場合は300万円前後になります。その後は1件追起訴されるごとに保釈金が50万円ずつ増額されていくようなイメージです。

 

 

保釈金を準備するのが難しい場合は、保釈支援協会や全弁協の保釈保証書発行サービスを利用できることもありますので弁護士にご相談ください。

 

 

特殊詐欺で示談をした方がいい?

特殊詐欺で示談をした方がいい?

 

1.示談をするメリットは?

特殊詐欺で被害者と示談をすれば執行猶予になる可能性が高まります。特殊詐欺は財産犯ですので、示談金という形で被害をどれだけ弁済したかが刑罰を決めるにあたって重要なポイントになります。

 

 

また、裁判官は被害者の処罰感情も重視していますので、示談という形で被害者の許しを得れば、減刑される可能性が高くなります。

 

 

2.示談金の相場は?

特殊詐欺の示談金の相場は被害金額とイコールです。ただ、被害者は以下のような負担を受けていますので、被害金額に慰謝料などを上乗せすることもあります。

 

 

【被害者の負担】

・詐欺で怖い思いをする

・自分を責めてしまう

・警察の事情聴取を受ける

・自宅のセキュリティを強化する

 

 

3.示談金を用意できないときは?

特殊詐欺では複数の被害者がいることが多いです。被害者が多くなると被害額も増えていきます。そうすると示談金額も上がっていくので、予算の制約により、十分な示談金を用意できないこともあります。そのようなケースでは、他の共犯者と共同で示談をすることもあります。

 

 

4.未遂でも示談をすべき

だまされたふり作戦により詐欺未遂で逮捕された場合、被害者には損害が発生していないため、示談をする必要はないとも考えられます。

 

 

しかし、たとえ金銭的な被害が発生していなくても、上記のような負担を与えているため、、慰謝料を払って示談をした方がよいでしょう。

 

 

5.実質的な被害者と示談をする

出し子が被害者のカードを使ってATMで現金を引き出した場合、銀行のお金に対する占有を侵害したとして窃盗罪が成立します。ただ、実質的な被害者は詐欺の被害者になるため、銀行ではなく詐欺の被害者と示談をすることになります。

 

 

特殊詐欺の被害者が示談をするメリット

特殊詐欺の被害者が示談をするメリット

 

特殊詐欺の被害者が示談ではなく民事訴訟を提起すれば、勝訴しても実際にお金を回収するのは難しいと思われます。

 

 

なぜなら、示談が成立していなければ、特殊詐欺の加害者は実刑判決になる可能性が高く、また通常はお金も持っていないため、たとえ勝訴判決を得ても差し押さえ等の強制執行をすることが難しいからです。

 

 

そのため、示談をすることは加害者だけではなく被害者にもメリットがあるといえるでhしょう。

 

 

特殊詐欺と再逮捕・追起訴

特殊詐欺と再逮捕・追起訴

 

1.特殊詐欺と再逮捕

特殊詐欺のかけ子は、複数の被害者にだましの電話をかけています。受け子や出し子も1度しか詐欺に関わっていないケースは少ないです。

 

 

警察は、被害届を受理した被害者1名ごとに1つの事件として扱い、事件ごとに被疑者を逮捕することが多いです。2度目以降の逮捕のことを再逮捕といいます。

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特殊詐欺で逮捕された方は、何度か再逮捕される可能性が十分にあります。余罪も含めて正直に供述すれば再逮捕を回避できる可能性が高まりますが、黙秘すれば起訴されないこともあるので、具体的な方針については弁護士にご相談ください。

 

 

2.特殊詐欺と追起訴

追起訴とは既に起訴されている被告人について、別の事件で起訴することです。

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特殊詐欺の被疑者は複数の事件に関わっていることが多いため、追起訴される可能性が高いです。何度も追起訴されると最初に逮捕されてから裁判が終わるまで1年以上かかることもあります。

 

 

 

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